BOOK3

□No.41
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「…これの事か」


『…なに、それ』


「…………ッ…」


『ジギー…?』


「…………お前も読め」


引き出しに入っていたのは、封が解かれた手紙だった。誰かがシャラクに宛てた手紙。


━シャラク中将殿

貴方が海軍を去り、随分と時が経ちましたね。私も近々、軍を抜けるつもりです…私は貴方の下で以外、動くつもりは無いのですから。


そう言えば先日、不思議な事がありました。死んだ筈の人間が、貴方の部下だった私を訪ねて来たのです。


貴方はあの時、クロスロードとラークロイドは死んだ。そうおっしゃいました。


あの2人が貴方にとってどの様な存在なのかは分かりません…随分と親しい間柄だったのでしょう。


しかし私には、本当の事を教えて下さっても良かったではないですか…


何故か既に満身創痍だった2人は、貴方の安否を確かめ、姿を消しました。


その時、気付いた事があるのです…


シャラク中将殿、もしや奴等の子が手元に居るのでは?出来ればそれは、私の思い過ごしであってほしい…


貴方の真っ直ぐ貫かれた“正義”の背中を追って、日々過酷な訓練にも励みました。貴方は私の光です。それは今でも揺るぎ無い事実。


貴方の正義が変わったとて私が貴方に抱く気持ちは変わらない…しかし私には、どうしてもあの貴方がクロスロードとラークロイド、2人の子を育てるなど信じられないのです。


何か目論見あっての愚行でございますか?私にはそれ以外考えられません!!


…口が過ぎました事お詫び申し上げます。貴方の事ですから、なにか考えがあっての事なのでしょう。その考えを知る事が出来たら、どんなに嬉しいことか…


2人の子を、いつか海軍本部へ連行するとお考えならば、その時は私も共に…


以前頂いた御手紙の返答はもうお分かりでしょうが、改めてご報告致します。


2人は共に生きており、今もグランドラインの何処かで身をひそめている事でしょう。


先日の出来事は、私以外に知る者は居りません。勿論、子の存在も口外してなどいません。


私はこの秘密を墓まで持って行く所存です。いつかまた貴方と共に、海に出る日を夢見ております。永久に貴方の部下でいさせて下さい…

ウィスリ━


『………』


私はあの時、手紙を読み終えた事など気付かなかった。中盤で既に思考が追い付かなくなってしまったから。ただ無心で追った文字の羅列が、プツンと途絶えただけだった。


『…ジギー』


「………」


『…シャラクは、私達の事…嫌いだったの?』


「…大方見せたかったのは、クロスロードって奴とラークロイドって奴が生きてるって箇所だろ…」


『それが…親の名?でも…そんなの、どうだって…どうだって良い!!』


「ミラー…くッ…あいつは…」


『目論見って?!私達との日々は…くだらない…くだらない“愚行”だった?』


「……ッ」


『ジギー…うそだよね?シャラクは…私達を…?』


「……くッ…」


『ねぇ…家族じゃ…なかったのかなぁ…そう、そう思ってたの…私、だけ?』


「俺だって!!……俺だって…そう思ってた…!!」


『だからッ…最期まで…私達への言葉は、何も…何も、いわな…かったの?…うッ…うーッ…!!』


「ッ…くそッ!!本当の親の…ことなんざ…知らねぇよ!!」


手紙を読み終え、私は再び泣き崩れた。


シャラクから受けたのは愛情なんかでは無かった…少なくともあの手紙からは、そう突き付けられたのだ。


「…ミラー…グズ…何か…ある」


『…グスッ…なに…?』


悲しみが溢れ出たジギーから放たれた拳が壁を殴り付け、その壁に空洞を開けた際…ジギーが何かに気付いた。
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