BOOK3
□No.43
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突然響いた悲鳴の様な泣き声に、勢い良く飛び起きたと同時に首の筋が一段と痛んだ。
スゲー速さで飛び出していくペンギンの背中が遠い…動けねぇ…
「ペンギンの野郎…荒治療にもッ、程があんだろッ!!」
(サッサと治せ)
その言葉は俺への労りなんかじゃねぇ!!
だって、それならガチガチに固められた首と同様に、これ以上動き回らねぇようにって、手足を拘束されたりしねーだろ?!
いやでもよ?それはやり過ぎだろ!!って、一応抵抗しようとはしたんだぞ?!
(俺は今機嫌が悪い…この意味が分かるか?)
そんな事をニヒルな表情で言われりゃあ、抵抗のテの字も出ねぇよチクショー!!
必死に芋虫の様に這い進み廊下に出た所で、他同様慌てて上を目指すベポの巨体が目に入り、俺は慌てて呼び止めた。
「シャチ?!新しい趣味が出来たの?!」
んな訳ねぇだろ!!だいたいこんな“趣味”の存在をお前はどこで覚えてきやがった?!
「むーッ!!コレほどけない!!」
ペンギーン?!どんだけ固く結んだんだよ!!
「くッ、ベポ!!俺の懐にジャックナイフが入っ「あーもー!!面倒くさいッ!!」え?」
“ザシュッザシュ!!”
「いっでぇーッ?!」
キラーンッと妖しく目を光らせたベポは、事もあろうか鋭い爪で手足を縛る縄を切り裂きやがった…遠慮なく俺の手首と足首を傷つけて。
「くっそ…少しは労れ!!」
一瞬野生に戻ったベポに悪態つきながらも、俺は首を覆うギプスを投げ捨て、急いで階段を駆け上がった。
未だ止まないその悲鳴にも似た叫びは…ミラーの泣き声。くそッ!!何でこんな辛そうに泣いてんだよ?!
4階に着くと廊下の先、船長達の部屋の前には既に声を聞き駆けつけたクルー共が群がっていた。が、何かおかしい…
「皆…何でそんなに存在消してるの?」
隣に立つベポも不思議そうにしていたが、皆に倣って気配を消して、静かに廊下を進んで行く。
クソッ!!俺も早く行きてぇのに!!焦燥感とズキズキ痛む手足に邪魔され集中出来ない。
やっと落ち着き、完璧に気配を消して人だかりに辿り着いた頃には…既にミラーの悲痛な泣き声は止んでた。
何があったのか聞きたかったけど、扉の前で耳を澄ませるペンギンが俺に向かって、口に人差し指をかざし、悟られるな。って目で制してきたから我慢する。
ただの痴話喧嘩じゃないって事は、あの泣き方からして明らかだろ…だいたい、船長があそこまでミラーを泣かせるようなこと、絶対する訳ねぇ。
…じゃあ、一体何なんだ?!
『ヒック…シャラク…』
室内からミラーの嗚咽と共に声が響く。シャラク?誰だそれ?どっかで聞いたような…
頭に“?”が上がる俺と同様、他のクルーも分かってねぇ様だ。そこら辺に“?”がポンポン上がってる。
唯一ペンギンは、固唾を飲み室内から漏れる声に耳を傾けていた。お前が知らねぇ事って…この世にあんの?
ペンギンはもしかしたら仙人なのかもしれねぇ…そんな事考えてたら、ミラーが嗚咽混じりではあるけど…ポツポツと何かを語り出した。
扉の前で一同ジッと耳に意識を集中させる。端から見たら異様な光景だよな、これ…