BOOK4
□No.50
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…そもそもの始まりは何だ。俺が食堂に来ちまったのが原因か?ならば何故、俺は食堂へ来た?
…ミラーが俺を煽る顔をしていたからだ。あんな顔をされちまったら、抑えきれねぇ。
だが今抱けば、確実に加減が出来ねぇ…だから俺は部屋を出た。
ではミラーがあんな顔をした原因は?…それは、俺のキスが、理由だろう…あの、少し激しいな。
何故俺はあの時、抑えが利かなかった…あぁ、シャチの野郎が俺より先に、ミラーを喜ばせやがったからだ。何だ…
「ズピーーッ!!」
やはり元凶はコイツか。
「へんッ!!どうせ俺は粗大ゴミさッ!!しぇんちょう!!一思いに、俺をバラして海に…海に捨ててくりぇい!!あッ、どうせならノースの海にッ…ズピピーー」
料理酒でここまで騒げる奴も幸せだな。だが、いい加減うざってぇ。
「…俺は戻る。シャチ、コックに謝っておけよ」
そろそろコイツの相手も疲れた。
だが席を立ち扉へ向かう俺に、尚も背後でシャチがグズッてすがり付き、本気で面倒くせぇ。
「シャチ」
俺は要らない子なんすねー?!と泣き付くシャチにため息を吐き、諭すように呼び掛ける。最近、鼻水やヨダレで服を汚してばかりな気がするな…
「ったく…今、俺の船に不要な奴なんざ居ねぇ」
「…へ?」
「だが…俺が要らねぇと判断すれば、容赦無く切り捨てるぞ」
覚悟しとくんだな。そう鼻で笑ってやれば、ポカーンとアホみてぇに口を開けていたシャチが、再び目を潤ませ始める。
「うーッ!!どこまでも着いてくッス!!」
どうやら少しはヤル気になったようだ。いつものふざけた調子で小躍りするシャチを見届け、俺はやっと食堂を後に出来た。
―――――----
部屋に戻ると、窓から射し込む陽の光がいやに眩しかった。カーテンが全開になっているのか…
予想以上に明るかった室内に一瞬目が眩んだが…戻った視界に入ったのは、空のベッドと無くなったシーツだった。
確か血で汚れたからな…浴室で洗ってんのか?
確認しようと浴室に体を向けた瞬間、ゴミ箱に虚しく収まる見慣れたボトルが目に入る。
フフッ…ミラーの奴、何だかんだ言ってちゃんと使ってやるのか。これで少しはあの野郎の機嫌も直るな。
ミラーの行動は毎回俺の…周りの心を落ち着かせる。不思議な奴だ。
だが、口元を緩めそう思ったのも束の間…
「…は?」
ガラッと開けた浴室に居たのは、あの不細工なイヌだけだった。
口から白濁の液体がダラッと垂れていて、無性に腹立たしい…いや、今はそんな事よりもだ。
「チッ…あの馬鹿何処に消えやがった!!」
あれだけキツく言い付けたにも関わらず、部屋から抜け出しやがったミラーに悪態を吐き出しながら、俺は急いで部屋を飛び出した。