BOOK4
□No.58
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…クソッ、まだ2時間も経ってねぇのかよ。
ふと目覚めて時間を確認するも、思いの外移動していなかったその指針に悪態をつく。
今日は半日程は寝て過ごすつもりだったんだがな…隣にアイツが居ねぇだけでこうも違うとは、我ながら笑える。
ペンギンの野郎は…アイツはペンギンの前では泣かなかったと言っていた。言い付けは守らねぇくせに、約束は律儀に守っているようだな…ったく。
だがペンギンから、遠回しに迎えに行けと言われた今…中々足が伸びないのもまた事実。あの野郎に促されたから行くみてぇで何だか癪だ。
「今頃…何やってんだろうな」
その呟きが静まり返った室内に虚しく響く。俺も何やってんだろうな…自嘲気味に笑い、気を紛らわそうと今朝運び込まれた本へと手を伸ばした。
軽くページをパラパラ捲り、次の本へと移る。
また同様に、一通りページに目を通し本を閉じる。次も、その次も…
最早内容など入っていない。意味も無く、文字の羅列を眺めるだけだ。
だが…ただジッとしているよりかは、それなりに気分転換となるな。
そんな折、慌てた様子のベポが飛び込んで来るなり、双眼鏡を要求して来た。お前の目を持ってして、何が見えねぇって言うんだ。
いや…確かに、目の前にあるから見えるって訳でもねぇな。近いからこそ見えねぇ事もある…
貸せ貸せとせがむベポに双眼鏡を渡し、俺が見えていなかった部分を考えてみるか…そう再度ベッドへ身を投げた。
部屋を出る前に声を掛けて来たベポに生返事をし目を閉じる。瞼に浮かぶのは、辛そうに唇を噛み締めたミラーの姿…
どうにか笑顔のミラーを思い出そうと躍起になっていると、今度はペンギンが訪ねて来た。次から次へとうるせぇな。
今回は素直に招き入れてやると、奴は甲板で宴が始まったから、気が向けば来いという旨の言葉を投げやりに言ってくる。
「ミラーはあのトナカイに随分肩入れしているようだ。大方、自分の心境と重なって放っておけないんだろう」
早く麦わら達が迎えに来れば良いんだがな。そう口元を弛めるコイツからの助言は、これで2度目だ。いちいち回りくどい言い方しやがって。
そのまま部屋を出る奴を見送る事無く、再び目を閉じる。迎えに…か。
どうするか…と葛藤の末、とりあえず何か食い物を漁りに行くという目的のついでに、様子を見る事にした。
飽く迄様子見だ。迎えに行くんじゃねぇ。だがミラーの奴があまりに沈んでやがったら、連れ帰ってやっても良いがな。