BOOK4
□No.58
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しっかりとした足取りで、俺は真っ先に甲板へと向かった。
少し足取りが軽い自分に気が付かないふりをしながら、俺は歩みを進める。
するとまだ遠く続く通路の先で、バタバタとクルーが機関室の方から甲板へと駆け込むのが見えた。
…そう言えば、船が急激に進路を変えたようだ。敵船にでも出くわしたのか?面倒くせぇな。
開け放たれたままの扉から、何があった。そう甲板へ踏み出しかけた足を戻し…そのままトンッと扉へもたれかかる。
視界の先には、この船に船尾を向け遠ざかって行く船と騒ぐクルー…そして、そっとトナカイを抱き上げるミラーの背中。
その顔は、俺の位置からじゃ確認出来ねぇ。だが…安心しきったトナカイの顔が異様に俺の神経を逆撫でした。
俺は黙って踵を返す。結局食堂に向かう事無くそのまま自室に戻り、棚の奥へと隠し込んでいた酒瓶を粗雑に取り出し栓を外した。
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“ゴトッ…”
足元に転がる空瓶をまた一つ増やした所で、やっと睡魔が襲ってきた。
随分無駄飲みをしちまったな…そろそろ俺のストックが無くなっちまう。またペンギンの所からくすねてくるか。
そんな事を考えながらベッドに身を預けるも、未だに意識が飛ばない。
身体は睡眠を要求しているにも関わらず、脳がそれを中々受け入れねぇ…
嫌に広々としたベッドに手足を投げ出すも、落ち着く場所が見当たらず…俺は無駄に寝返りばかり打つ。
クソッ…何だって言うんだよ。俺はガシガシ頭を掻きながら、ため息混じりに立ち上がった。
“ガチャッ…バタン”
…俺は迎えに行くんじゃねぇ。眠れねぇ原因を確かめに行くだけだ。普段は絶対こんな事しねぇがな…酔いのせいでもあるんだろ。
目的の部屋の前に着き、確認する事無く扉をゆっくりと開ける。
迷う事無くベッドへと視線をやれば、トナカイと寄り添って寝息をたてるミラーが居た。
そっと傍に歩み寄り、ミラーの頬に手を伸ばす。するとミラーはくすぐったそうに笑いながら身を縮めた。
『んー……ロー…』
「………」
再び響く規則正しい寝息。それに伴い、急激に襲ってきた睡魔…やっと俺の脳が休息を促しだしたようだ。
「…へへ、綿あめの海だー…グー…」
幸せそうな顔をしてヨダレを垂らすトナカイをベッドから投げ捨て、急に無くなった温もりに眉を寄せるミラーを包むよう、その隣へと身を寄せてやれば…コイツは穏やかな表情を見せスリ寄って来た。
安心しきった顔を見せたミラーに苦笑しつつ、その額に唇を寄せれば、自然と俺も落ち着いた眠りへといざなわれる…
拠り所
(うー…あつい…あー…ルフィーあついー…)
(……)
(んー…ゾロォ…くさッ…うぅ、酒くさいぞ…)
(…うぜぇ)