BOOK4

□No.60
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「麦わらがミラーを拐ってバビューンッて飛んでったんだよ!!!!」


やべぇんだ!!油まみれの床に座り込み必死に説明すると、ペンギンはキッと表情を変えて、踵を返し走り去った…


きっと船長にはペンギンが伝えに言ってくれてる筈だ。俺はどうにか立ち上がらねぇと何も出来ねぇ!!


クソッタレが…油なんざに負けてたまるかよ!!扉のノブに手をかけながら必死に立ち上がろうと奮闘してると、ペンギンが走り去った方向から凄まじい殺気が駄々漏れ!!


「せ、船長!!ミラーがグベァ?!」


勢い良く突っ走って来た船長は、俺がその範囲を広げちまった油の埋め尽くす通路に舌打ちをして、スピードを緩める事無く…そのまま俺を飛石代わりに踏みつけ先を急いだ。


「すまんシャチ、今は我慢しろ!!」


そう言って後から来たペンギンも、豪快に俺の頭を踏みつけ油を避ける。


お前はそこを動くな!!去り際に放たれたその言葉を、俺が大人しく聞くわけがねぇ。


「っだぁー!!くそったれが!!」


俺はツナギの上半身を脱ぎ下げ、Tシャツを脱いで油で光る床に敷いた。


その上を這って進み無事油を抜けた先で、今度は靴を脱ぎ捨て裸足のまま急いで駆け出す。


忙しなく動き回るクルーの間を縫い、辿り着いた甲板から見えたのは、今にも麦わら達の船が水平線の彼方へ消えようとする姿だった。


もうどう足掻いても追い付けねぇのは、俺でも分かる…


「…船長」


唇をキツく噛み締め、血が滲む程拳を握り締めて水平線を見やる俺の前に居るペンギンが、更にその奥…柵を掴み、同じく刀を力強く握り締めた船長に声をかけた。


「多分、奴等の目的地は…俺達とおな「黙れ」ッ…船長」


ペンギンの言葉を遮って船長は、顔を隠すように頭に手をやる。そこには、普段常に被さっている帽子が無い。


「喋るな…消したくなる。お前等も…」


俺も…苦々しく呟いた言葉に、俺は息を飲んだ。上半身裸の俺に、容赦無く強力な陽射しが照り付けてるにも関わらず、俺は震えてる。


船長から放たれる殺気が…留まることを知らねぇ。


「…ペンギン、当分はお前が指揮をとれ。標的は麦わら屋だ」


島なんざ関係ねぇ。それだけ言って船長は無表情のまま、甲板を出て行った…取り残された俺達の間に張り詰めてた沈黙は、バタバタ集まったクルーの足音に掻き消される。


船長と同じ様に鋭く放ってた殺気をサッと抑えてから、ポケットに手を突っ込んで堂々と俺達に向き合うペンギンを余所に…俺は今、自分がするべき事を必死に考えてた。
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