BOOK4

□No.67
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「船長!!島です、島が見えました!!」


勢い良く飛び込んで来たクルーの報告に、ゆっくりソファーから立ち上がり、帽子と刀を手に俺は部屋を後にした。


「麦わら屋の船はあるのか」


ポフッと帽子を定位置に乗せながら低い声でそう尋ねると、甲板へ向かう俺の背を追っていたクルーから、いッ今確認中です!!と、若干ビクついた声が漏れる。


モスキー島か…確かログは半日で貯まった筈だ。それに中々厄介な島だからな…もし麦わら屋共が居たとしても、上陸はしてねぇだろう。


海上戦も視野に入れ戦略を立てつつ甲板へ出ると、双眼鏡を覗き込んだペンギンの姿が目に入った。


「どうだ」


その隣に歩み寄り尋ねると、ペンギンは何やら難しい顔を向け口を開く。


「麦わらの船を確認しました。奴等は既に船を停泊させているようですが…」


そこで言葉を濁すペンギンに続きを促せば、どう思います?アレ。と眉を寄せ、俺にその手の双眼鏡を寄越す。とりあえず見ろって事か…


渡された双眼鏡から島を覗けば、確かにハッキリと麦わら帽子を被った、奴等のマークを掲げた船が確認出来た。


「…本気か?」


そして、その船尾に提げられた物も…


「罠…にしては、些か陳腐過ぎる気もしますが」


続々と甲板へ集まりだしたクルーの喧騒に紛れ放つペンギンの言葉を聞きながら、俺は再び双眼鏡を覗き込んだ。


“ミラーは元気!!交戦の意思無し!!”


シーツの様な白い布に、デカデカと書かれた俺達へのメッセージ。アイツ等、舐めてんのか。


「…お前等、戦闘準備をしておけ。もう少し接近すれば俺が船内を調べる」


気を抜くな。船首位置を陣取り、柵に腰を下ろしながら背後へとそう言い放つ。


静かに顔を引き締めだしたクルーを確認し、俺はゆっくりと刀を担ぎ直した。


「…何だ?」


段々とその輪郭をハッキリ現してきた島を、皆無言でひたすら見つめている中…周囲を警戒していたペンギンが、何かを見つけたようだ。


どうしたんだよペンギン?そう脇を小突く、先程から落ち着きの無いシャチに鬱陶しそうな顔を向けつつも、さっきの奴等か。などとペンギンは一人何か納得をしている。


「どうやら俺達を潜行させた海軍船は、海の藻屑と化したようですよ」


そうペンギンが顎で示す先に目をやれば、僅かな木片と共に軍旗が海を漂っていた。


麦わら屋共がやったのか?ミラーは本当に無事なんだろうな…


思わず、ギュッと刀を握る手に力が入る。今なら小さな島一つ破壊しかねない自身の衝動を抑えつつ、俺は視線を一点に集中させた。


目を凝らせば、船尾に提げられたあの文字がぼんやり確認出来る迄に互いの船が近付いた頃…俺はその能力を解放するべく、静かに腰を上げた。


背後に控えるクルーも、俺のその行動が何を表すのか理解したようで、それぞれが静かに身構えだす。


張り詰めた空気が甲板を包み、伝わるのはクルーの緊張…


「ミラーを取り戻せば、あの船に用はねぇ…潰すぞ」


妖しい笑みを浮かべそう言い放つと同時…俺は刀の柄に手を伸ばし、勢い良くその鞘を甲板へと投げ捨てた。
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