BOOK4
□No.68
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柔らかい俺の手つきに、ミラーが目元を弛め、ホッと安堵を含ませた顔で俺を見上げてきたが…
『えっとー…』
未だ俺の目が怒りに染まっているのを確認し、コイツは再び顔をひきつらせた。
『ロ、ローさん?考えを改めた訳、では…?』
「ねぇよ。俺がこのまま黙って引くとでも思ってんのか」
鼻で笑いそう言い放つ。先に手を出してきやがったのは向こうだ…見逃してやる理由がねぇ。
いや今回は黙っとこ?!そう慌てるミラーに、手元で器用にジャックナイフを弄ぶシャチが、呑気な声を寄越してきた。
「ミラーー?もう諦めろよぉ。ここまでヤル気になった船長は、もう誰にも止めらんねって」
な?と笑うシャチに、それじゃ私が困るんだよ!!などと更にミラーは喚きだす。
ひたすら騒ぐコイツを余所に、未だ此処から少し離れた海面に立つ不自然な波に目をやっている中響いたミラーの叫びに、俺は思わず視線を戻し眉をひそめた。
「どういう意味だ」
『え、いや私も良く分かんないけど…でもとりあえず、麦わらの一味に喧嘩売らなきゃ渡すってよ!!その時私の牙も一緒にかえ…ハッ!!』
ななな!!何でもない!!私は何も言ってねぇ!!などと焦って口を閉ざすミラーの牙は成る程、交渉道具になってるって訳かよ。
大方、奴等の悪印象を与えねぇ為にミラーは隠してたんだろうが…にしても、俺に渡す物とは何だ。
(ローにとって、必要な物くれるってよ?!)
『それにあの船の人間は、4人を残して皆遊びに行っちゃったからさ?!今居ないの!!ねッ、だからやめよ?!』
…麦わら屋共が船に居ねぇのは分かってんだよ。
だが、本当に上陸したと言うのか?あの島に踏み込むたぁ、余程の馬鹿か…又は大物か。
「フッ…まぁ良い。お前が吐かねぇなら、奴等に吐かせるまでだ」
『え?!はッ?!』
焦るミラーの背後で、船内からペンギンが不要な空樽を抱え戻って来たのを確認し…俺は再びサークルを発生させた。
『ッ?!ロー?!何する「シャンブルズ」わーーッ!!』
“ガゴンッ!!”
「フッ…やっぱ何か居やがったか」
ミラーの制止を振り切り、伸ばした腕が海面の獲物を捉えたその瞬間…甲板に置かれた空樽の位置に小型のパドルシップが出現し、次いで派手に音を立て倒れ込んだ。
対面
(いったぁ…何なの…?!)
(ナミさん…ロビン、ちゃん…無事…かい…)
(えぇ、あなたとチョッパー以外は無傷よ…それより、ちょっと不味い状況みたい)