BOOK4
□No.69
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「ミラーもっと上向いて、って馬鹿!!目だけよッ。顔まで上げないで!!」
ボーッと人形の如くされるがまま状態の私は、何故自分には魔女の素質が無いのだろう…なんて放心していた。
手の届く場所に有ったのに…海の底って…海のエネルギーを放つブツが、その海に入っちゃったら意味ねぇじゃん…
『ルフィの野郎…一生呪ってやる』
ボソッと私が呟くと同時にナミちゃんが立ち上がり、私目掛け勢い良く熱風を当ててくるから、やっと現実に意識が戻された。
『あ、暑い!!何なに?!うげ、ドライヤー?!』
ちょっと動かないで!!ガシッと頭を鷲掴みにしたナミちゃんが私を俯かせ、視界に入った自身を纏うヒラヒラに、開いた口が塞がらない…いつの間に着替えたんだ!!
手際良く私の髪を綺麗にセットしたナミちゃんに、どういう事だ?!と困惑して尋ねると、呆れ気味に言葉を寄越された。
「さっきシャワー浴びたでしょ?ずっとブツブツ言いながら放心してるから、全部私がやってあげたのよ。覚えてないの?」
シ、シャワーだと?!まさか、海水でベタベタだった身体を洗ってくれたの?!なんてこった!!せっかくの女王様待遇を全然覚えてねぇ!!
「それ、可愛いでしょ?前にアラバスタで買った踊り子衣装なんだけどまだ、一回も着てないからあげるわ」
本物の女帝気分を味わえたのに!!なんて勿体無い事を!!
頭を抱える私の全身を確認して、ナミちゃんが満足気に笑う。
「よしッ。アンタ化粧映えする顔ね〜。一段と綺麗になった!!ふふッ…もう島に着くわ。アンタの船も、そろそろ見え始めるんじゃない?」
『本当ッ?!』
そう言うナミちゃんに、私も笑顔で小躍りするも…慣れないスカートに股が涼しい。
『私、甲板に出てるね!!』
居ても立ってもいられず…近付く船に一番近い場所に居ようと、ルンルンで扉の横に立て掛けられた牙を手に取れば、ズシン…!!と伝わる重みにテンションが駄々下がり。
…相変わらず機嫌悪いなぁ。最悪だ…深いため息を漏らす私に、ナミちゃんが怪訝な顔で問い掛けた。
「ミラー…何で海楼石なんかが欲しいの?それの為って言ってたけど…」
怪我しない身体なんて、最高じゃない。そう疑問を寄越すナミちゃんに牙の事を…どうしても首刈りに戻らなきゃいけない理由を簡単に説明。
「ふーん…じゃあ、愛しの船長の為ってのはどういう理由?」
『え"…?』
楽しそうに聞いてきたナミちゃんに、思わずどもる…あの時、動揺し過ぎて変な事まで口走ったんだった!!
いくらなんでも…思う存分ヤる為ですわ?なんて言えねぇ、絶対言えねぇ!!だけど上手い言い訳が思いつかーん!!
どうしよどうする?!なんて返答に窮する私を見兼ねてか、ナミちゃんはそのまま続きを促す事無く歩き進めた。ホッ…