BOOK4
□No.2
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手紙、か…
「フフ…」
アイツ等が出したあの手紙は、ちゃんとジロンギーの野郎へ届いたらしい。
だが手紙を持って来たのがベポで良かったな…他の奴なら、この状況に固まっちまって面倒な事になっただろう。
俺は真横でシーツから生身の肩を晒し、うつ向きで気持ち良さそうに眠るミラーを見てつい笑みが漏れた。
その手には、ガッチリと海楼石の錠が嵌まっている。
忌々しい海楼石を、まさか自分自身がこんなにも求めるようになるとは…
『ん…』
「…………」
声を漏らし体勢を変えたミラーの胸元…双子星の真上に、これで幾つ目になるかも分からぬ痕を残す。
『ふぬ…う?…ロー…おはよぉ』
僅かな痛みを感じたのか、眉間に皺を寄せながら目を覚ましたミラーが俺を確認するなり、その顔を柔らかい笑顔に変えた。
「まだ動けねぇだろ。もう少し寝てろ」
乱れた前髪を掻き分けながらそう言えば、気持ち良さそうに目元を弛め擦り寄って来たミラーに、思わず苦笑が漏れる。
流石に昨日の今日で抱けば、当分ベッド生活になっちまうだろう…俺はそれでも良いけどよ。
『んーー……』
「……?」
俺の胸板に顔を埋めたミラーが何か唸っている…そんなに身体がダルいのか?
大丈夫か?そう声を掛けようとした所で、スッとミラーが俺から離れて行く。
「…どうした」
穏やかな笑みを見せるコイツへと尋ねれば、へへへ〜。と満足気に笑いながら再び身体を寄せて来た。
『シャラクにね、報告してたの。私、今幸せって…』
そう言って俺の胸板に、先程俺が付けたソレと同じ痕を作るミラーの頭にソッと手をやる。
こんなにも心が穏やかなのは、いつぶりか…
「で、お前の親父は何て言ってると思う?」
ゆっくり頭を撫でながら、柄にも無く柔らかい声色でそう聞けば…ミラーは満足気に俺の胸元に付いたマークへ指を這わせながら、顔を上げ言葉を寄越した。
『多分、怒ってるね』
面白そうに笑うミラーとは違い、俺は眉間に皺を寄せる…そんな俺を見てコイツは、更に笑いだしやがった。
『ふふッ、そりゃあ怒るよ…娘が、自分より良い男に惚れちゃったんだから』
勝てないじゃん。そう笑って愛しそうに俺の胸元を指でなぞるミラーに顔を寄せれば、弱々しくも全力でソレを拒否された。
ボフッとシーツを被り顔を隠すミラーに、いい加減諦めろ…そうため息を漏らすも、寝起きのキスは何が何でも許せねぇらしい。
「分かった、しねぇからとりあえず顔出せ」
そう言うもコイツは、嘘だぁ…私が動けないのを良い事にする気だぁ…って全然信じねぇ。
「…そういや、お前に手紙が来てたな」
ボソッと小さくそんな事を呟けば、動けねぇと言うその言葉とは裏腹に、シーツの縁から勢い良く顔が飛び出てきた。そんなに兄貴の手紙が嬉しいかよ…
目を輝かせたミラーが、スッ!!と手を差し出す。まさか…俺に取りに行かせる気か。
その思惑に非難の目を向けるが、私今動けないの!!などとコイツは急かしてきやがった…何かムカつく。
「…手紙は顔洗ってからだ」
立ち上がりタオルを巻きながらそう告げ、えッ嘘?!と慌てるミラーを、シーツごと抱え俺は浴室の方へ向かった。