BOOK4

□No.4
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『……なにコレ。食いもん?』


食堂に着くと、シャチがすっげぇショッキングカラーな魚を調理してて…その横でヨダレを垂らしたベポが、早く早くッ!!とソレを急かしてた。


「よ、よう。おおお!!おはよう!!」


私を見るなり何やら焦った様子で挨拶を寄越すシャチの手元から、有り得ない量の胡椒が魚に…いやそれは振り掛け過ぎじゃね?!辛いって!!


「あ、キャプテンにミラー!!」


そして、ショッキングフィッシュに呆然とする私達に気付いたベポが、嬉しそうな顔でこっちに駆け寄りながら声を掛けてきた。


「さっき釣りしてたら、魚いっぱい連れた!!でも生だとゲボ不味だったから、今シャチに味付けしてもらってんだー」


味が付いたらきっと食える!!そうウキウキなベポにかける言葉が見つからない。


どう考えてもあのショッキングフィッシュを食おうなんて考えるのはベポ、アンタだけだよ…


だって…蛍光色だよ?ってかソレ本当に魚なの?!潰れたコオロギみたいな顔してるけど?!


「腹減った…ミラー、お前何か作れ」


さッかッなッ!!さ・か・なー!!と騒ぐベポを尻目に、無表情のローがそう指令を寄越す。


作れってアンタ…前もそう言って私に野菜炒め作らせて、結局食わなかったじゃん。


本当に食うのかよ。ジト〜と怪しむ目を向けてれば、早くしろ。って無理矢理厨房に押しやられ、仕方無く食材を漁る。


「き、昨日はー、暑かったなー。俺、汗だくだったぜー。なー」


な…なんもねぇ、だと?って大きな冷蔵庫のスカスカな中身に呆然としてたら、隣で未だ様々な調味料を振り掛け続けてるシャチが、棒読み過ぎる不自然な口調で話し掛けてきた。


『は?昨日?…モスキー島出てからは、大分涼しくなったじゃん。これぐらいで暑いとか…』


お前どんだけ冬体質なんだよ。


いや、それより今問題なのは、食材がこのショッキングカラーの魚しかねぇって事だ…私も腹減ってんのに!!


だいたい、昨日の宴で贅沢しすぎたのが悪いんだろ?!何であんな盛大に騒ぎまくったんだよ!!


……ハッ?!私の為だ!!文句言ってごめん!!


でもどうしよう…と悩みつつもとりあえず、味付けの意味を履き違えてるシャチを押しやって、代わりに私が唯一の食材を最初から調理し直した。ノリで。だって味見とか絶対したくねぇし。


傍らで私の手元を凝視するシャチを放置して、少しだけ残ってたバターと共に魚を炒め私は厨房を出た。


『ベポー?出来たよー』


はい、どうぞ。そう渡した皿の上がカオス。お皿がパレットみたいになっちゃってるよ…


「やったーッ!!ありがとう!!」


良い匂い!!って…あんたに視覚的味覚は無いんかい。こんなパレットに歓喜の声を上げるのは、絶対ベポだけだって。


「…俺の分はどうした」


勢い良くがっつくベポに冷めた目を向けつつ、ローがムスッと苛立ちを見せる。どうしたもこうしたも…


『…ローもアレ、食べる?まだ一応残ってるよ?』


アレ。とベポが持つ皿の上で、電飾のように怪しい光を放つブツを指せば、ピクッて…額に…青筋が…ま、待て待て?!


「フッ…俺にあんなもん食わせようとは、良い度胸してんじゃねぇか」


『ま?!だ、だって!!冷蔵庫すっからかんなんだって本当!!何も作るもんがねぇ!!』


だから抑えろ!!その手のサークルを消してくれ!!


「うまうまッ!!ミラー!!凄いうまい!!」


『なぬ?!本当か!!ローッ、旨いらしいよ?!とりあえず食ってみろって!!』


サッと、幸せそうに頬へ手をやるベポの影に隠れながら、ローに向かってそう叫ぶ。


ローが旨いって言ったら私も食う!!そろそろ本当にお腹と背中がくっつきそう!!


「ならお前が毒味しろ」


ベポの舌なんざ当てにならねぇ。帽子の影から見下すように不敵な笑みを見せるローが、私と同じ魂胆なのを確認して…私はソロォ〜っとベポの背中に隠れた。



それは勘弁



(そうだ!!お兄ちゃーん?!助けてー!!)

(んあ?ミラー何してんだよ?)

(丁度良い…シャチ、アレ食え)

(アレ?アレって…アレ?!ムリムリムリ絶対イヤだ)

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