BOOK4

□No.5
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起きて早々、皆には蹴られるわ働かされるわ胃が捻れるわで最悪だったけど…


出すもん出して、一旦死んだら治った。最近少しずつ酒強くなってる気がするぜ!!にしし。


甲板のど真ん中から、未だ死んだように身動き一つせず眠るクルーに勝ち誇った笑みをこぼしてたら、俺の背後から、グウォ〜!!って腹に響く低い声が…え、なに?!恐竜?!


焦って、バッ!!と勢い良く振り返った先には、柵に腰掛け釣糸を垂らしてる、寂しそうなベポの背中…何だ驚かせやがって。


「あ!!シャチ起きたの?」


俺の視線に気付いたらしいベポが、嬉しそうな顔を寄越してそのまま軽快なステップで俺にドーン。


「ぐべッ?!ベポ…お前…毎回考え無しに突っ込む癖どうにかしろ!!」


派手に鈍い音を立てて、打ち付けた頭を擦りながら、すいません…って毎回必要以上に落ち込むコイツの抱えてるバケツを覗き込む。


そんで絶句。


「はッ!!そうだシャチ!!これ調理して!!コックも死んでるから、シャチにしか頼めないんだッ」


そう言って、ズイッと満面の笑みで俺にバケツ差し出すベポ。


あれ、俺ここまで馬鹿だった?調理って、確か食いもんに使う言葉だよな…違ったっけ?


「腹減り過ぎて俺、このままだと大変な事になるッ」


“グウォ〜”


そう嘆いて腹の音を響かせ、お腹ペコペコ!!なんて怒って俺の背中を押すコイツの発言からして、調理ってのはやっぱ俺が考える意味で合ってるらしい…


さっき恐竜の雄叫びだと思ったのは、ベポの腹の虫だったのか…どんだけだよ。


でも釣りしてたって事は、やっぱバケツの中身は魚だよ…な?イヤ、どう贔屓目に見てもコレは魚じゃねぇけど。


魚の形した、顔面潰れたオッサン。しかもめちゃカラフル。グラサン越しでも、生き物の色してねぇのバレバレ…うげぇ。


「ベポ…お前、本気でコレ食う気か?」


恐る恐る背後に顔を向ければ、勿論!!って…マジかよ。


「生は無理だったけど、味が付けばイケる筈!!」


いやイケねぇよ確実に。


ってか、調理って何?味付け?焼けば勝手に味が付くんじゃねぇの?


頭を悩ませつつ、早くッ早く!!って急かされるまま仕方無く厨房に立ってはみたけど、何から手を付けりゃ良いのか…はぁ…だる。


「ったく…不味くても文句言うなよ?俺、料理なんざ出来ねんだから」


こうなりゃヤケクソだ。俺はとりあえず、ズラッと並べられた調味料缶を、それらしい雰囲気で手に取った。


「………」


“S”って何だ…スパイス?


“A”は…ア、アンビリーバボーな味が付くとか?


“P”は分かるぜ!!ピンチヒッターだろ?あれ、胡椒ってどれだ?!…面倒くせぇ!!


「だいたい何で俺が…こういう細かい作業は、ペンギンとかミラーのが向いてるだろ…」


ブツブツ文句を垂れる俺にベポが、何かペンギン疲れてるみたいだから、困らせちゃ駄目だよ?なんて説教してきやがった。俺を困らせんのは良いのかよ。


「そう言えばキャプテンの部屋、通気性悪いみたいなんだよねー。またどっか配管おかしいのかな?」


適当にぶっかけときゃ良いか。ってパラパラ調味料振り掛けてる俺の横で、ベポが首を捻る。


おかしいって…不味くね?また俺のせいとかだったら、確実バラされる…


既に泣きそうな俺が話の詳細を求め、告げられたその状況に俺硬直。訳分かんねぇ粉末駄々漏れのまま硬直。


服着てなかった?二人共?しかもミラーの腕に海楼石の錠が付いてた?何で?


(今すぐあの錠を拾って来やがれ!!)


船長が海楼石欲しがってたのは知ってたけど…え、ちょッ…ま!!ままままさか?!


(今夜は甲板で寝るのが賢明だぞ)


おいおいマジかよ…やべぇ俺でも分かっちゃった…!!


あーにきぃー!!ミラーが…ミラーが大人の女になりましたーッ!!


ギャー恥ずかしい!!何で?!俺が恥ずかしがる話じゃなくね?!でも何か恥ずかしい!!ギャーッ!!
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