BOOK4
□No.6
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“コンコン…ドンドンッ”
激しく戸を叩きつける音で目が覚めた。誰だうるせぇ…
「今はやめとけって。ペンギン、疲れてるらしーんだからよ」
『でもッ?!疲れてるなら、尚更…』
扉越しに聞こえる声からして、酷く寝不足なこの俺を叩き起こしたのは、シャチとミラーのようだ。全く…
「…どうした?」
寝癖がついているであろう頭を撫で付けながら扉を開ければ、困った顔を見せるミラーと、ダルそうなシャチの姿。
『あッ、ペンギンさん!!ベポから、ペンギンさんが酷い顔してたって聞いて…あの…島、島が見えたんです!!結構大きいんですよ?』
だから…遊びに行きましょう?そう俺の手をとるミラーは、何だか一段と輝いて見える。ふッ…昨夜は船長と仲良く出来たようだな。
「お前大丈夫か?まだ薄らクマ残ってんぞ?」
若干心配を露にするシャチ、お前等のせいで俺の疲労は蓄積されてんだよ。ミラーの色声なんざ聞いたら、テメェ等発狂し兼ねねぇだろうが。
『ペンギンさん、昨日宴の時から様子変だったし…私、前に言いましたよね?何でも言ってくださいって』
そうムクれるミラーの顔は、以前見たものと一緒だった。
(一人で背負わないでくださいね?!約束です!!)
参ったな…そんな顔をされると軽々しく、大丈夫だ。なんざ言えないじゃないか。
「ふふ…すまないな。だが、無理はしていない。島か…丁度欲しい物もあったんだ」
準備をするよ。そう笑う俺に嬉しそうな笑顔を見せ、私も準備してきます!!と駆け出す元気な背中を見送った。
「なぁペンギン…」
俺同様、遠ざかるあの背中を眺めていたシャチが、珍しく真面目な声色を寄越す。今回は二日酔いに悩まされてねぇらしい。
「船長が麦わらん所の奴にもらったのって、海楼石じゃねぇのかなぁ…」
どう思う?そう眉をひそめるコイツは、そこまで答えが出ていながら何を悩んでんだよ。
「俺…絶対ド変態プレイしてたと思ったのに、なんだかミラーの奴元気だしよぉ」
やっぱ鞭はねぇか…などと呟き、普段使わねぇ頭を悩ませるシャチは、ミラーの身体は海楼石無しでは普通に抱くのも困難だって考えまでには及ばねぇんだな。
「あぁ!!やっぱ分かんねぇ!!」
帽子越しに激しく頭を掻くシャチを放置して、俺は自分の身なりを整えながら買う物を頭に並べる。
酒は確実だ。最近旨いもん飲んでねぇ。あとは耳栓に…あぁ、何か面白そうな本も買うか。
「なぁ、お前は分かってんだろ?!俺にも教えろよーッ。俺も涼しい顔で笑いてぇ!!」
成る程な…って不敵に言いてぇ!!などと意味の分からない事を喚き地団駄踏むシャチにため息を漏らしつつ、上陸準備を整え甲板へと向かう。
そこには島が見えた事にテンションを上げたクルーが、顔色悪くも楽しそうにソワソワ落ち着きのない姿がチラホラと…
だがそんなクルーを余所に、いち早く双眼鏡片手に島を確認していた奴の発したその言葉に、俺の頭の中で警報が鳴り響いた。
いや…まさかな。
「うお本当だ!!イッパイ居るぜ?!可愛いなぁ〜」
俺の横で双眼鏡を掲げながら、だらしなく口元をニヤつかせたクルーの手から乱暴にソレを奪い、直ぐ様俺も島の様子を確認する。
「……マジかよ…」
最悪だ。
「今回の島はどれぐらいでログが貯まる」
ツカツカと歩幅狭く歩み寄る、何やら不機嫌な船長が俺へとそんな声をかけるも…正直俺は今、それどころじゃねぇ。
「…残念だが、俺はこの島に関しちゃ無知だ。船長、悪いが今回は自分で情報収集してくれ」
俺はこの島には上陸しねぇ。