BOOK4
□No.6
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ビョウ島…この島について、何かしら知識が有れば…俺は素直にこの進路をとりはしなかっただろう。
先程突き付けた俺の上陸拒否に、どういう意味だ。そう更に眉間に皺を刻む船長へと、手元の双眼鏡を差し出す。
そして確認したその島の様子に、船長は俺が上陸しない理由を納得したようで、フッ…残念だな。なんて笑ってきやがった。
全くだ…最近上手くいかない事ばかりな気がする…ため息しか出ねぇ。
段々距離を埋めてきた、見た目は何の変哲も無い島に悪態ついていると、甲板に一際明るい声が響いた。
『わぁ〜立派な島!!きっと春島だね!!』
ポカポカで気持ち良いッ。上機嫌なミラーがそうニコニコしながら俺と船長の元へ駆けて来る。
『気分転換にはピッタリの島ですね!!ペンギンさんの欲しい物って、なんなんですか?』
眩しい程の笑顔を向けるミラーの質問に、俺より早く船長が口を開いた。そして響き渡る非難の声…
『うっそ何で?!ペンギンさん上陸しないんですか?!準備万端なのに?!』
美味しいご飯が待ってますよ?!そう詰め寄るミラーに俺は苦笑を向ける他無い。
「フッ…諦めろミラー。今回ばかりはペンギンを自由にしてやれ」
随分楽しそうに笑ってくれるじゃないか船長。にしても…ものの一瞬で、不機嫌な船長をこんな顔にさせるミラーは流石だな…仲良くやってくれて何よりだ。
「すまないミラー。俺の分も、船長と楽しんで来てくれ」
スッと伸ばしかけた手を、寸での所で引っ込める。船長の目の前で、流石にそれは不味い。
『ぶぅ…分かりました。ペンギンさんの欲しい物って、何だったんですか?代わりに買ってきます』
船長に頭を撫でられ、不貞腐れながらも素直に納得したミラーに口元を弛めつつ、じゃあ頼むよ。と告げ、酒と面白そうな本を数冊だけ頼んだ。
耳栓は諦めるしかない。本人等を目の前にして、色声を遮る詮が欲しいなんざ言えねぇよ…
ため息を漏らすと同時に船長が俺の腕を掴み、ポケットから取り出した紐をこの手首へ巻き付けてきた。何なんだ一体?
「結構あるな…」
ブチッと俺の手首に合わせ紐を千切り、再びソレをポケットに仕舞った船長が何に納得したのかは分からない。ミラーも怪訝な目を向けていた。
「ミラー見てー!!凄いイッパイ居るよー!!」
可愛い〜ッ!!島を目前に、此処からでも確認出来る様になった岸辺の光景を指しながら、ベポがミラーの腕を引いて船頭へと駆ける。
「…小電伝虫を持っていく。何かあれば連絡しろ」
それだけ告げ船内へ戻る船長の背中は楽しそうだ。何故最初、あんなに不機嫌だったんだ?
『うわスゲ!!本当イッパイ居る!!ニャンコだニャンコ!!可愛いーッ』
ミラーも岸辺で身体を休め陽の光を浴びる、あの小動物共を確認したらしい…はぁ。
エターナルポースに記された島の名を見て気付くべきだった。ビョウ島…まさか“猫島”だったとは…最悪だ。
「ペンギンお前上陸しねぇらしいじゃん?!どうしたんだ?!腹減ってねぇの?!」
俺もミラーも船長も、そろそろ限界!!そう大袈裟に俺へと駆け寄り腹を擦るシャチのその言葉で、先程船長が不機嫌だった訳を理解した。
「…何か土産を買ってきてくれりゃあ、それで良い」
飯よりも今は酒が飲みてぇ。
ツイてない
(あ、ペンギンさん!!ちょっとこっち…)
(…?何だ?)
(実は…)
(…?)
(ジギーから手紙、来たんです!!ペンギンさんなら無くす心配無いから、皆より先に読んでて良いですよッ)
(ほぉ、ジロンギーの奴にちゃんと届いたんだな)
(それ読んで暇潰してて下さい!!夜までには一度戻りますねッ)
(あぁ…土産話を楽しみにしておくよ)