BOOK4
□No.7
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「「『可愛いなぁ〜』」」
船首の位置から身を乗り出して、私達をそのつぶらな瞳で見上げるニャンコ達にデレデレする中、錨下ろしましたー。って響く声。
「まだいつログが貯まるかも、この島に何があるかも分からねぇ」
日暮れには船に戻れ。そんなローの指示を合図に、皆勢い良く飛び出して行っちゃった。
『じゃあッ、私達も行ってきますね!!ペンギンさん、留守番お願いしまーす』
優しい笑みに見送られながら私も前を行くシャチとベポ、そしてローの背中を追う。
「ミラー見てみてー!!俺大人気ッ」
キャッキャ笑い声を上げるベポの頭や肩には、びっしりニャンコが…羨ましい!!
「それより腹減ったー。船長、何食いますか?」
俺肉が良いな〜。なんてよだれを滲ませるシャチの手元には、海楼石の錠が入ってる紙袋と、ローの刀…つまりは荷物持ちだね。
『私は別に何でも良いやッ。あの魚以外なら』
あんなゲテモノ食うのはベポだけだ。って冷めた視線を送るも、本人は全然気付かない。
私が適当に調理したあのショッキングフィッシュを綺麗に完食したベポは、既に腹が満たされてるらしくニャンコに夢中。
幸せそうな顔しちゃって…あのゲテモノ、冷蔵庫の中にまだ少し残ってたな…戻ったら処理させよう。そんな事を考えてると、不意にローが口を開いた。
「とりあえず今は情報収集だ…あの店にするぞ」
そう言うローが足を進める先には、小汚ない酒場がチョコン…ちゃんと食い物あんのかよ?
“カランカラン”
「はいはいどもー。適当に空いてる席座ってー」
その店内は見た目程汚くはなく、客も結構入って忙しそうな為、私達は小さな店員君から席に案内される事無く、適当に腰を落ち着かせた。
『おッ、シャチ肉あるよ!!私は何にしよっかなぁ』
オムライスも良いけど、ハヤシライスも捨てがたい!!
「ん?…あれ?……あーッ!!」
やっぱりクリームオムライスにしよ!!って顔を上げると同時に、水を運んできた先程の小さな店員君が声を上げた。何なにどうした?
「アンタッ、首刈りだろ?!マジ本物?!すげぇ!!」
俺あんたのファンなんだ!!そう差し出された手に呆然としてたら、奥で店主の怒声が響き、少年は焦って厨房に戻って行った。
「なんだアレ?」
ポカーンとする私同様、アホ面なシャチの言葉を無視して、ローは近くを通った他の店員に注文プリーズ。私も慌ててクリームオムライスを頼んだ。
「フッ…随分人気じゃねぇかよ」
あんなガキにまで好かれるたぁな。そう余裕な表情を見せるロー。
確かに…あの少年、見た感じ12〜13歳だし、そんなチビッ子に対抗心も何も無いさな。
『ファンなんて言われたの、生まれて初めてだよ…サイン考えとこっかな!!』
お、それ良いな!!って乗り気のシャチと、備え付けの紙ナプキンに自分のサインを考えてたら、店に入ってから大人しかったベポが…急にモゾモゾモゾモゾ。
「ウー…ーッ…!!」
唸り声まで上げちゃって…何だどうしたの?
「キャプテン…俺、俺ッ…先に船戻るー!!」
ピューンッ!!と凄い勢いで飛び出すベポに、一同キョトン。一体どうしたっての?!
『ちょっ、私ベポの様子見て「お待たせしましたー」…ギュルー…』
ごめんベポ。今の私は、食欲には勝てなかったわ。