BOOK5

□No.10
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『これとか、美味しそうじゃない?』


「それは俺用に買う。こっちにしろ」


公園を出て、私達はまず本屋へ行き、ペンギンさんにサスペンス系とスプラッター系の本を買った。勿論、私の独断と偏見で。


そして今は酒屋で、この島名産だと言う地酒を物色中!!


「あんちゃん御目が高いね〜。そいつは10年古酒だから、凄いコクがあるよッ」


ペンギンさん用を探してる筈なのに、ローはさっさと自分の分だけ会計を済ませてしまった…あの野郎。


『ねぇオジさん。この島って、他に何か美味しい食べ物とかある?』


ニャンコが多いから、魚とか?ゴンッと無駄に多くなってしまった酒瓶をカウンターに置きながらそう尋ねる。ツマミがあれば、酒も進むだろうしッ。


「いや〜姉ちゃん、この近辺で捕れる魚は食えたもんじゃねぇよ!!」


ぶははははッ。なんて豪快に笑うオジさん。やっぱり、魚はあのショッキングカラーの奴しか居ないんだ…


「火を通せば、脂が染み出て酒のツマミにゃ最高なんだがよぉ…」


なんて言って商品を袋に詰めるオジさんに、私は驚きの声を放つ。


『あのショッキングフィッシュ、美味しいの?!本当に?!』


ベポの舌も馬鹿に出来ないね!!そうローに向かって笑い声を上げれば、いや〜。と、オジさん何故か苦笑。


「旨いっちゃ旨いが…姉ちゃん、アレは食わねぇ方が身のためだ。なんせあの魚「プルプルプル」ん?電話か?」


オジさんの話を遮った呼び出し音は、既に入り口の所でダルそうに壁に背を預けたローのポッケからプルプルプル。何だよ良い所で!!


“船長、俺です”


なんだ…ってローが出た先から漏れたのは、ペンギンさんの何だか疲れた声。


“ベポの様子がおかしい。すぐ戻れますか?”


ってか戻れ。多分小電伝虫の向こうでは、そんな顔してると思う…何となくだけど。でもどうしたんだろ…大丈夫かな?


分かった、すぐ戻る。頼りになる声でそう答えるローの顔がスゲェ面倒臭そう。ペンギンさんにもバレてそうだな…


「ミラー、戻るぞ」


床に投げ出してた荷物を抱え直して、ツカツカ歩き出すローの背中を私は慌てて追った。


『ベポ…どうしたのかなぁ?』


食あたりとか?眉を寄せた私の両腕から溢れる酒瓶入りの袋を数個奪って、ローが、さあな。って笑う。いや笑い事か!!


「ペンギンの様子からして、大した事ねぇよ」


呑気にそう言うローは、本当にペンギンさんには絶大な信頼と絆があるらしい…ちょっと羨ましい。


「フッ…お前とジロンギーみてぇなもんさ」


素直に思った事を告げれば、妖しく笑ったローからそんな事を言われた。


『確かに…ジギーとローって、少し似てるかも!!』


ペンギンさんと私は似てないね…そう肩を落とす私に、ローがスンッゲェ嫌な顔を向けて来たのは、見なかった事にするね。



本当の事だし



(あの変態と一緒にするな)

(いや私が言ってるのは、そんなピンポイントな話で無くて…)

(あの野郎のアイデンティティーはそこだろ)

(いや、まぁ…否定は…)

(はぁ…)

(…ロー?ほら、んッ)

(…?なんだ)

(なにって、手。だから荷物持ってくれたんでしょ?)

(ッ………)

(ふふッ!!ローの手、温かいね!!)

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