BOOK5

□No.16
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『ん…んー…!!ス…スフィンクス?!』


バッ!!と飛び起きてまず目に入ったのは…驚いた様に目を丸くしたペンギンさんの、すっとんきょ顔。


はれ?何処だ此処…甲板?


…あぁ、昨日ローが風呂から上がってそのままベッドに行ったから、何もかもビショビショで寝れなくなったんだったわ。


目覚めきってないフワフワした頭をポリポリ掻きながら、ボーッとそんな事を考えてたら、どんな夢を見てたんだ…?なんて呆れた表情のペンギンさんが声を寄越した。


『あー…おはようございまーす…んー、何か、おっきい肉きゅうが私をフニフニしてて…』


振り返ったら、スフィンクスが居ました。アクビ混じりの私の返答に、苦笑いを見せるペンギンさん。


あの気持ち良かった肉きゅうの正体は、俺が揺すったせいかもしれないな。って無造作に跳ねた私の髪を撫で付けて笑うペンギンさんの手だったらしい。


「部屋に居ないから何処に行ったかと思えば…言えば俺の部屋を貸してやったのに」


そう言って未だ私の横で、ベポを枕に穏やかな寝息を立てるローを乱暴に揺さぶるペンギンさん。


「どんな遊びをしたのか知らないが…早く干さないと、生乾きの臭いが付くぞ?」


困った様に眉を寄せて笑うペンギンさんに、私も乾いた笑みを向けるしかなかった。


ペンギンさん…何でベッドがあんなんになったのか、勘づいてる…よ、ね?はははッ、恥ずかし。


「ったく全然起きやしねぇ…」


軽く悪態つき、ミラー。と私を呼ぶペンギンさんの顔は見れなかった。何となく、トラウマが再発しそうで…


「船長を起こして、出発の準備をしてくれ」


そろそろ時間だ。そう言って船内に戻っていくペンギンさんの背中に、ラジャー!!と声を投げ隣に視線を落とす。


そして思わず、私はギョッと顔をしかめた。


『ロー…まさか、それで寝てるの?』


もし返事が無かったら…そう恐る恐る尋ねた私にの元にちゃんと、んな訳ねぇだろ。って届いた不機嫌な声。


『良かったぁ…目ガン開きのまま寝れる人だったらどうしようかと思ったわ』


機嫌の悪そうな顔でボーッとしてたローに、いつ起きたのかと聞けば、お前より早くだ。って予想外の返答。


『そうなの?何で寝たフリしてた訳?』


ゆっくりと起き上がってダルそうに首を鳴らすローに問い掛けながら、昨夜は気持ちの良いクッションとなってくれたベポを揺り起こす。


「別に…気まぐれだ」


先に戻る。それだけ言ってサッサと甲板を後にするローに首を傾げながらも、私はその背中を見送った。嫌な夢でも見たのか?


「うー…あー、ミラー…おはようー」


眠そうな目を擦りながらムクッと起き上がったベポと、まずは顔を洗いに行き、お腹空いたね〜。なんて話ながら食堂へ。


するとその道中…前方から、必死の形相で駆けてくるシャチの姿。


『おはよーシャチ。そんなに慌ててどうしたのさ?』


行く手を塞ぐ私達に、どけ!!間に合わねぇ!!ってジタバタするシャチに呆れながらそう尋ねる。


「寝過ごした!!そこ通せ!!顔洗ってションベンもしなきゃなんねぇんだ!!」


どいてくれー!!って…何だよシカトしやがって。シャチのくせに。


『オイコラ、人が朝の挨拶してんだから返せよ』


「そーだそーだッ」


ねぇー?なんて呑気にベポと顔を合わせてたら、シャチからまさかの爆弾発言投下。


「『えッ?』」


「だぁから!!あと5分で出発すんだと!!俺何も準備終わってねんだよ!!」


置いかれんのだけは勘弁ッ!!そう叫んで駆け出すシャチに、私達はただただ呆然。


数秒の間、ベポと互いに間抜けな顔を向け合い…やっと現状を理解出来た私は、シャチ同様慌ててピューンッと駆け出した。


『やべぇ私も何も準備してねぇ!!』


「俺もだ!!……あ、俺特に準備するもん無かった」
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