BOOK5

□No.20
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ヤバいよヤバ過ぎる!!今何時?!もうどんなに言い訳したって、許される範囲を越えちゃってるよね?!


“ドタドタドタドタッ”


「待たんかーッ!!」


“ドタドタドタドタドタドタッ”


『っだぁ!!もう横っ腹いたーいッ!!シャチ、私を担げ!!』


「うるせぇぞミラー!!黙って走れ!!」


『はぁ?!だいたいテメェのせいだろうが!!』


「あぁ?!元はと言えばお前があんなモン見付けて来たのがワリィんだろ?!」


「コラーッ!!待てー!!」


「『誰が待つかバカヤロー!!』」


“ドタドタドタドタドタドタドタドタッ…”


───────────ーーー


『えーッ?!何で私だけ留守番なの?!』


突然寄越された理不尽極まりないその指示に、声を大にして抗議するも…船まで一緒に戻ってやる。って私の腕を取るローは、全く聞く耳を持ってくれない。


でも、ズルズル引きずられながらもしぶとく、最後まで見届けないと気が済まなーい!!って駄々をこね続けた結果…ローは舌打ちと共に、違う案を寄越してきた。


『えッ、別行動?』


そうだ。そう私から視線を外すローの顔を訝しげに覗き込むも、ポフッと目元を大きなその手で覆われて、それ以上は何も見えなくなった。


「俺は北を行く。残りの東西は好きに振り分けろ」


4時間後には船に戻れ。広場にポツンと伸びる時計を見て淡々とそれだけ告げ、サッサと一人船を泊めた方とは真逆の海岸へ歩き出したローにポカーン。


そんな背中を呆然と眺めている私の隣で、ため息混じりに、成る程ね…なんて呟くエスパーペンギンさん。


「シャチ、お前俺等の荷物持って先に戻ってろ。そっちの方が効率が良い」


そう言って、担いでいた大量のお金が入ってる袋を、ドカッ!!とその場に置いて肩を回すペンギンさんに、シャチが分かり易く顔を歪めた。


「悪いが俺も一人で行かせてもらうよ。ベポとミラーは西を頼む。この島にもう敵は居ないが…一応気を付けろよ」


特にミラー、無理はするな。私の頭を一撫でして駆け出すペンギンさんに、もう開いた口が塞がらない。


そりゃあ、分担した方が早く終わるけどさ…空っぽの船沈めるぐらい、別に皆でやったって良いじゃん。何だよ別行動って…つまんないの。


「どうしたんだろうねぇ2人共?まぁ良いや。シャチ、よろしくね?」


じゃあミラー、行こっか!!ニコニコ嬉しそうに私の手を取るベポに、やっぱり来ました待ったの声…


「ベポ!!どーお考えても、生身の人間である俺がこの量を一人で運べる訳ねぇよな?!なッ!!代わってくれ!!」


泣き付くシャチに向けられるベポの顔は尋常じゃない程嫌そう…せっかくの可愛い顔が…


「やだよ!!せっかくミラーと一緒に行けるのに、何でシャチに譲らなきゃいけないんだ!!やだ、やだーッ」


「ふざけんな代われ!!」


「やだ、絶対やッ!!」


掴み掛かるシャチに、プーイと顔を背けるベポ…そんな2人のやり取りに、既に飽きた私。


『…もうさ、船は私一人で潰して来るから、2人でその荷物持って帰んなよ』


ってか早く進みたい。


「「それは無理ッ」」


ミラーを一人にしたらキャプテンに怒られちゃう!!俺はバラされる!!って…私、これでも立派な大人なんすけど。


『じゃあさ、ジャンケン!!ジャンケンで決めよ!!ハイせーのッ』


ジャーンケーンポンッ!!突然の掛け声に、条件反射で腕を突き出す2人の手元は…


「……っだぁ!!チクショー!!」


拳を突き上げ崩れ落ちるシャチを余所に、飛び跳ね喜ぶ勝者ベポの腕を取り歩き出した瞬間だった。


「ん?…んは?!ややややっぱり俺が船戻る!!じゃあね!!」


バビューン!!って、重たい筈のあの荷物を軽々担いで、アッという間に遠ざかるベポに…もう言葉が出ない。


あのジャンケンの意味は?これまでの時間は一体何だ!!


『はぁ…まぁ良いや。とりあえず早く行こうよ』


困惑してんのか喜んでんのか分かんない格好で固まるシャチの背中を押して、やっと、やっと私達はこの場を離れた。
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