BOOK5

□No.21
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昨夜、ペンギンからアイツ等の話を聞いてから…あの時から、着々と蓄積されてきたこの胸のムカつき。


今回は全てミラーに任せようと決めたが…いざ終わってみると、不安は消えても胸に残るこの怒りまでは鎮まらなかった。


“バチャーンバシャバシャバチャン…”


パラパラパラ…水面から持ち上げた船体を跡形も無く粉砕させ、再び藻屑として水面へと戻るその様を眺め続けるも、未だ僅かにどす黒い塊が心に居座っている。


ドラッグか…胸糞わりぃ。その所業の割に、骨の無い相手だったのがまた癇に障る。


スッキリしない身体の疼きに、苦々しく奥歯を噛み締め再び岸に沿って歩き出せば…岩壁の隙間から小さな波止場が現れた。


そしてその渡しの先に浮かぶ船。それに印された、海賊を示すシンボルに思わず口角が上がる。


“ブウォン……”


自身の能力が一帯を包み込んだのを確認し、俺は再度刀を抜いた…


─────────ーーーーーー


この先にはもう船を泊めれるような場所はねぇか。


先程までとは激しく姿を変えた岩壁を尻目に、自船へと戻る為歩みを進める。


2度に渡り、衝動に任せ無心で動かした身体は大分落ち着きを取り戻していた。


俺の所に2隻…ならば残りはせいぜい2〜3隻ってとこか。本当は俺一人で潰し回っても良かったんだが…


その理由は分からねぇが、ペンギンの野郎も色々溜まってる様子だった。


アイツは無駄に空気を読むせいか、俺にすらその本音を隠す…たまには周りを気にせず、好きに暴れさせてやるのも悪くない。


何より俺自身、今ミラーと一緒に行動するのは御免だ…あんな風に暴れる様は見せなくねぇ。


…ペンギンが単独行動を取ってるのは間違いない。ならば…あの荷物だ。一人は先に戻った筈…ミラーの馬鹿はおそらく、ベポと行ってんだろうな。


“ニャーン”


全くアイツは…少しは自分の身体を労れ。そうため息を吐いた俺の前に、一匹の白猫が飛び出して来た。


本当にこの島は猫が多い…いい加減うんざりだ。


尻尾を妖しく動かしながら、伺うようゆっくり距離を詰めだした白猫を、遠慮無しに睨み付ける。


その大きなブルーの瞳と視線が交わった瞬間、猫はピタッと動きを止め、ジッと俺を見上げていたかと思えば…次の瞬間、逃げる様に勢い良くサッと踵を返し姿を消した。


少しでも触れようものなら、きっと俺はあの白猫を雑に突き放していただろう。ペンギン程じゃねぇにしても…流石にここまで大量に居ると鬱陶しい。


あの一匹以来、俺に構う事なくただ木陰で身を休める猫共の横を過ぎゆく中、ふと何事も無く終わっていくこの現状に、多少安堵している自分に気が付き…思わず苦笑が漏れた。


ミラーの奴も…何だってこんな、必要以上に纏わりつくこの生き物が好きなんだろうな。


アイツの目が無いにも関わらず、猫共を避けて歩く。


女一人に振り回されている…そんな自分に気が付かないフリをして、足早に自船へと続く道を辿った。
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