BOOK5

□No.21
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中心街を抜ける際目に付いた時計台の指針は、既にこの島でのログが貯まった事を示していた。


そして約束の時間まであと15分。流石に島を縦断すると、それなりに時間がかかっちまう。


戻り次第出航するか。そう考えていた俺を出迎えたメンツは、大分数が足りなかった。ふざけんな。


「何故あの2人を組ませた…」


俺もついさっき戻って来た所です…一番乗りでね。そう多少スッキリした様子のペンギンに尋ねれば、奴も俺へ呆れ気味にため息を寄越した。


「ベポと行かせた筈なんですがね…あの様子からして、嫌な事でも思い出したんでしょう」


そう苦笑を向ける先に居るベポは、持ち運んだ金の袋で壁を作り、小さく丸まり震えている。たかが魚とは言え…相当辛かったようだな。


「はぁ…アイツ等が戻り次第、出航だ」


準備をしておけ。それだけ告げればペンギンは、了解。と後ろ手に返事を寄越し船内へと向かった。


その途中、隠れきれてないベポの尻に何かボソボソ話し掛けてたかと思えば…ベポは勢い良く飛び起き、明るい顔で奴の背中を追い消えてしまった。


その様子に眉を寄せるも、まぁ何か餌で釣られたんだろ。そう思い、甲板へと腰を下ろし島を見やる。


こんな島に、軍の大物が来る心配はねぇだろ。面倒な同業者ももう居ねぇ。唯一目障りなのは…


“ニャオーン”


アレだけだな。わざわざ不快な思いをしてまでアレの間を縫い、迎えに行く事もない。


何より、そろそろ俺もアレに足が出兼ねない…そんな事してミラーに喚かれるのは面倒だ。


「…少しは発散出来ましたか?」


遊んでやがったらバラしてやる。そう海岸線を眺めていた俺の隣へ腰を下ろすペンギンの仕事は終わったようだ。


「ミラーに見せれない程、派手に暴れたんで?」


楽しそうに笑うコイツに思わず舌打ちが漏れた。この野郎は俺の隠した心情を簡単に見透かしやがる…本当に面倒な奴だ。


「お前も少しは自分を取り戻せたのかよ」


あの時、珍しく力が入っていたペンギンの姿を思い出し、鼻で笑いながらそう言い放てば…奴は罰の悪そうな顔を見せ、アンタには本当参る…その言葉と共に肯定の笑みを寄越した。


「船長…俺は船長に付いていくと、心に決めている」


これからも宜しく頼みますよ。柔らかい声色でそう告げるコイツに、改まってなんだ。と、苦笑をこぼせば、決意表明だ。などと放ちペンギンは帽子へ手をかけその目元を隠すも…上がりきったその口角までは隠せてねぇ。


「フッ…ならばあの2人を探して来い」


俺に従うんだろ?不敵に笑いそう言い放つ。勿論、答えは分かりきっている。


「それは丁重に断ろう」


ペンギンはため息と共に降参のポーズをとり、期待通りの答えを寄越す。


だが、理由はきっと船長と同じでしょうよ。と笑うその最後の台詞は予想外だった。どうやらこの船は、ミラーを中心に回りつつあるようだ。


「フッ、どこまでも面倒な女だな」


思わず漏れた呟きに、全くだ。そう力強く答えたペンギンの声に混じり、遠くから微かに…本当の面倒事を告げる叫び声が響いた。


「…はは、流石ですね」


乾いた笑い声を上げるペンギンを余所に、俺は痛む頭を抱え込んだ。


どう生きたらここまで厄介事を招き込める…俺には理解出来ねぇ。
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