BOOK5

□No.22
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“ンニャッ”


正座する私の背中から、ピョンッ!!と膝の上に移動して来た綺麗な虎毛のニャンコが、キュートなつぶらな瞳で私を見上げてきたから…思わず、驚きより先に感動が沸き起こった。


『シャッチン見て!!虎来たよ、虎!!うっわ可愛いー!!ずっと虎欲しいって念じてたから?!』


私ってやっぱり魔女?!それともテレキネシス?!やべぇよペンギンさん超えちゃったかも!!


ゴロゴロ喉を鳴らしながら私に擦り寄る虎毛を抱え上げ頬擦りしていると、頭上から背筋も凍る勢いの舌打ちが…


忘れてた…私今、怒られてたんだっけ?


「船を戻せ」


コイツを捨ててこい。小さくなり始めた島を見やり、その背後で呆然と固まるペンギンさんにローが非情過ぎる冷たい声色で出した指示を聞き、私は慌てて立ち上がった。そして何故かシャチもスタンドアップ!!


『捨てるの?!せっかく新しい能力開花したのに?!』


「あのオッサンの元に帰るんですか?!船長俺もう一回あの猪見たら夢に出る!!」


それはいやだー!!そう声を揃える私達に歩み寄るのは、分かり易く顔を引きつらせたペンギンさん。


「…船は付けないで、船長の能力でソイツを置いてくれば良い。ミラー、悲しいかもしれないが…ソイツにだって仲間が居るだろう」


引き離すのは酷だぞ?なんて最もな意見。


それに対し名残惜しくも、確かに…そうですね。と納得して肩を落とした瞬間、私に抱きかかえられていた虎毛がこの腕から抜け、勢い良く、バビューンッ!!って船内へ駆け出してしまった。


『あ、待ってー?!何処行くっふぉ?!』


アッという間に姿を消した虎毛を慌てて追い掛ける私の腕を捕らえたローが、頭を抱えるペンギンさんと、馬鹿みたいに口をあんぐり開け呆然と立ち竦むシャチを見やる。


「アレの処理はお前等に任せる…海に捨てるなり戻すなり好きにしろ」


サラッと恐ろしい指示を出したローに声を荒げつつ、捨てちゃ駄目だからね?!ちゃんと帰してあげてよー?!なんて引きずられながら背後に投げ掛けた声が、ちゃんと最後まで2人に届いたかは分からない…


『もー…ロー?どうしたの?』


虎毛何処行ったのかなぁ…って注意深く辺りをキョロキョロ見回していた私をグイグイ引くローに問い掛けるも、奴は前を向いたまま無言でひたすら歩みを進め…私放置。酷い。


「お前、もう自分の立場忘れてんだろ」


ベーッ!!って目の前にある広い背中に向かって舌を出していたら、振り返る事無くいきなり声を掛けられ…ドキッと心臓が跳ねた。コイツ…後ろに目がある、だと?!


『いや、そんなッ…何もしてないよ?!』


なーんにも!!本当大人しく引きずらてる!!そう後ろでアタフタする私に、何してやがったんだよ…なんて呆れ顔を向けたローには、先程の悪態はバレてないらしい…良かった、一応目は前方に2つなのね。


「全く…そのすぐ切り替わる頭をどうにかしろ」


怒る気にもならねぇ。って盛大にため息を吐かれ、そう言えば怒られてたんだった…と再度思い出した。


もしかして私ピンチ?ってかシャチは?


…え、私だけマンツーマンで怒られんの?!やだ恐い!!


最悪だ…骨は残るだろうか…そう項垂れる私を引くローが足を踏み入れたのは、船長室…ではなくて、治療室だった。何故?
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