BOOK5

□No.23
1ページ/3ページ



ったく…何処行ったんだよアイツ。


ペンギンは言うまでもなく不機嫌MAXだし、頼りのベポは今居ねぇし、船長はミラー連れてどっか行っちまうし…


はぁ…笑って走って疲れた上に、猫探しかよ。だいたい猫が隠れそうな所ってドコだ?猫の気持ちになりゃ分かるのか?


猫の気持ち猫の気持ち…ねこ…ネコ…俺は猫…にゃー。


もし猫なら、俺はまず食い物の匂い辿るな…そう思って鼻を利かせ這い進み、辿り着いたのはベポの部屋。何で此処から甘い匂いが?


「あれ?なんだ、此処に居たのかよ」


無断で扉を開けた先にはちゃんと、その部屋の主が居た。けど主は俺に背中向けて、お前が部屋に居るなんて珍しいな。 って呼び掛けにも無反応なまま、何やらフォガフォガ…何やってんだ?


「あッ、うっまそ!!」


大きな背中越しに、忙しなく動くコイツの手元を覗いたら、綺麗な包みに入ったバターの匂い漂う旨そうな黄金色に輝くクッキーが!!


「うわぁ?!シ、シャチ!!驚かせないでよ!!」


心臓飛び出るかと思ったじゃん!!そう怒りながらもさり気なく、サッと俺からクッキーを引き離すベポ。なんだよくれねぇのか?!


「駄目!!これは俺がペンギンに貰ったクッキーなの!!」


あげないよ!!って怒鳴って勢い良く立ち上がったベポに、一つぐれぇ良いじゃねぇか!!と詰め寄っても、この野郎頑として寄越してくれねぇ。


「チェ、なんだよケチくせぇな。だいたい何でペンギンがお前にそんな旨そうなクッキーくれんだよ!!ずりぃ!!」


「簡単に酔い潰れてくれる馬鹿とは約束してないからな」


「あぁ?!じゃあお前も酒飲んでみ、って…あへ?」


ムシャムシャ満面の笑みでハムスターみてぇに頬を膨らませてるベポは、多分何も喋ってねぇ…じゃあ今の声は?


「こんな所で油売ってたとは…随分と余裕だなぁシャチ」


「………ヒィ!!」


ギ、ギ、ギ…って、油射してねぇロボットみたいにぎこちなく首を回して視界に入ったその光景に、思わず漏れた悲鳴…俺、死んだわ。


あの猫は何処に居るんだ?って腕を組み、扉にもたれた体勢で俺に声を掛けるペンギンの顔が…顔が!!あれ絶対夢に出る!!


「猫って?なになに、何の事?」


ヤバいヤバいヤバい、ペンギンの目がマジだ殺される!!ベポの身体に隠れてブルブル震えてると、ゴックン…って最後の一枚を飲み込んだベポが、指に付いたカスを舐めとりながら明るい声を上げた。


「どうせお前には船長から何かしらのペナルティがあるだろう。覚悟しておくんだな」


蔑んだ様な笑みを向けて言い放ち、次いでベポに状況を説明し始めたペンギン。俺は真っ白…先が思いやられるなんてもんじゃねぇよ…うわ逃げたい。


「えー?!猫が居るの?!どこ何処?!何処に居るの?!」


そんなニコニコ黄色い声を上げるベポ、お前になりてぇ…頼むから俺と変わってくれ…


「俺はちょっと船長の所に行ってくる。浅瀬に入ったら錨降ろしとけ。あと…戻るまでに見つけとけよ」


魂抜けきって放心する俺に、ゴツンッ!!と一発頭に入れたペンギンに無理矢理現実に引き戻されれば、これ以上俺に探させるな。って…流石にそれは理不尽じゃね?!言えねぇけどさ!!


「見つからなかった時は…分かるよな?まぁ、ベポも一緒ならそう時間はかからねぇだろ」


サッサと行けよ。って絶対零度の笑顔で促された俺は、マッハでベポ引っ張って部屋を後にした。


けど、サッサと行けって…“サッサと逝け”の方じゃじゃねぇよな?ははは、はは…


誰か助けて。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ