BOOK5
□No.24
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黙々と足を進めるローの背中を呆然と眺めながら、私はふと例の問題を思い出し、隣のペンギンさんに身を寄せながら声を潜めた。
『そういえば、ニャンコはちゃんとい……どうなりました?』
あぶねー。今一瞬口が滑って、生きてますか?なんて聞くとこだった…いくらなんでも大海原に放り投げたりはしないでしょ…しないよね?
「さぁ…どうなっただろうな。これだけ静かならもう見つかったんじゃないのか?」
誰も居ないしな。そう私を覗き込むような形で優しい笑みを向けてくれるペンギンさんは、捜索隊に加わる事を放棄したらしい。
「ミラー、確か奥に仕舞ってる筈だ。引っ張り出して来い」
ニャンコもう帰っちゃったのかなぁ。って寂しい気持ちで歩いてたら、洗濯室の前で立ち止まったローが、トンッと壁に背を預け室内を指しそう告げてきた。
疑問は有ったが、はい!!って元気良く返事をし、急いで洗濯室に駆け込む…ペンギンさんも一緒に引きずり込んで。
『ペンギンさん引っ張り出せって何をですか?!』
さっき話聞いてなかったから分かんないんです!!そう必死に泣きつく私の姿にペンギンさんは軽く吹き出して、肩を震わせながら綺麗に畳まれたツナギを数着引っ張り出してくれた。
ツナギ?何で?そう首を傾げる私に、もう一つ小さいサイズでも良さそうだな。って何か見極めたらしいペンギンさんがその一着を残し、広げたツナギを再び綺麗に畳み始めたからとりあえず私もその作業を手伝った。
「そういえば、そろそろアレも乾いて「うげわ、船長?!なななんで此処に?!」…」
元の位置に畳んだツナギを戻し終えたペンギンさんが何か呟くと同時に、外から響いたビックリ声。
その慌てきった声色に、ペンギンさんの顔がスッと険しく…おっとこれ以上直視するのはよそう。
「げば?!ぺぺぺ、ペンギン!!」
そして洗濯室から現れた私達…いや、ペンギンさんの姿に、より一層焦り出すクルー。やっぱり私の前に居る男は、そんな反応しちゃう顔してるのね。
「今総動員で探してっから鎮まれ!!鎮まってくれ頼む!!」
この通り!!そう手を合わせ深々頭を下げるクルーに、探すってあのニャンコ?と私が訪ねれば、クルーは首がもげそうな程上下にブンブン…まだ行方不明だったんだ?ならお触りタイム取れるかも!!
「…飯までには終わらせろ」
よっしゃ!!と密かに笑う私と違い、ため息混じりのローがそう告げるや否や、行くぞ。って奴は再び歩き出した。
行くって何処にだよ。そう思いつつ、その背中を追おうとした瞬間…私の前に居るペンギンさんが安堵の息を漏らしていたクルーの肩に、ポンッと手を起くから、思わず私までもがビクンッ…な、何事ですか?!
「終わり次第、アレを船長の部屋に運んでおけよ」
若干不機嫌な声色だったけど、それ以上は特に何事も無く歩き出したペンギンさんにクルー同様ホッと胸を撫で下ろす。
でも、最後ペンギンさんが洗濯室の奥を指し示した“アレ”を確認して、思わず私苦笑。
そこに有ったのは昨日、ローがビショビショにした私達のシーツとマット。誰かが洗って干しててくれてたのか…皆に勘ぐられてないと良いな…
チラッと伺ったクルーの顔に“?”が浮かんでいるのを確認して、ひとまず、フゥ…と安堵の息を漏らしながら、私も先を行く2人の背中を追った。