BOOK5
□No.25
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「…………」
無事あの猫が見つかった。船もビョウ島に船首を戻し進んでいた筈だ。そして浅瀬に入れば、錨を降ろせと確かにコイツに…
「あッ、あのよペンギン!!そのッ、じじじ、実は「黙れ沈めるぞ」ごッ?!ごめんなひゃい!!」
今は俺に話し掛けるな。この状況を理解するのに、もう少し掛かりそうなんだよ…
「…………」
島は何処だ?何故見渡す限り、漆黒の闇が広がっている…
いや落ち着け…そうだ、今は無いものの事を考えてもしょうがねぇ。まずはこの状況に陥った理由からだ…
「…さっきの続きを聞こうか」
何とか思考を追い付かせ、背後でオロオロするシャチに向き直りそう促す。もうどんな答えが寄越されようと、動揺する事もないだろう。
「お…俺、その…聞いてなくてよ…錨、降ろしとけって話…」
あの時放心状態で…そう言葉を濁すシャチにため息をこぼし、俺はズキズキ痛み始めた頭を抱えた。
コイツに任せた俺が馬鹿だったんだよな…クルーにちゃんと伝達出来ていなかったのも不味かった。すっかりミラーの事に気を取られてしまってたよ…
「…まぁ良い。結構流されてるな…あの島のエターナルポースは何処にある」
あれさえ有れば問題は無い。多少時間は掛かっちまうが…そこは目を瞑ろう。
そう楽観していたんだが…どうやらその考えも甘かったらしい。未だ顔色が優れねぇシャチの野郎から、質問に対する返事が一向に来ねぇ。
「あの…!!たいっへん!!申し上げにくいのですがッ…エターナルポースの行方まで俺は知りまっせん!!」
すいやしぇーん!!と甲板に額を擦り付けるシャチの言葉に、確かにコイツが知っている方が奇跡か。そう思い直し、俺は黙ってこの場を後にした。
しかし不味いな…判断力が鈍ってやがる。どうもここ最近ツイてねぇ…一旦冷静にならねぇとボロが出そうだ。
「ぬご?!ペンさんッ…?!スイマセン今必死に探してる所で…!!」
冴えない頭を冷やす為向かった浴場でもまたクルーに詫びられたが、構う事無く冷水で顔をゆすぐ。
「はぁ…その件は解決した。そんな事より誰か、ビョウ島のエターナルポースを知らないか?」
そして眉間の皺がほぐれた顔を拭いながら発した声は、幾らか落ち着いており、今の今までアタフタしていたクルー共が多少安堵するのが伝わった。
「エターナルポース?いや、俺は知らないッスけど…」
知ってますか?んー、お前持ってる?いんや俺も分からねぇ。と、互いに聞き合うクルーに再び俺の顔が険しくなっていく…まさか無くしたなんて事は…ないよな?
「おもッ、思い出した!!そうだよベポ、ベポだ!!最後ベポが持ってた筈!!」
段々と顔に影を落とし始めた俺を見て、懸命に記憶を辿っていたクルーからやっと次に繋がる発言が寄越された。
ベポか…そう言えば一昨日、俺自身がベポに任せたんだったな。そんな事も思い出せねぇとは…
「…他の奴等にも伝えておけ。もう猫探しは終了だとな」
飯の準備もしておけよ。それだけ伝えベポを探す為歩みを進めれば、誰も居ない通路で気配を辿るのは容易く、思いの外すぐに目的の熊と出くわす事が出来た。