BOOK5
□No.28
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クソッ…何だってこのタイミングであの野郎が現れやがるんだよ面倒くせぇ。
アイツのあの酷ぇ顔を見る限り、大方牙の異変に気付き、慌てて飛んで来たって所なんだろうが…必要ねぇんだよシスコン野郎。
「嘘だろ何で兄貴が此処に居んの?!」
「いやそれより何で死にかけてんだよ!!」
「氷ッ、誰か氷持って来い!!」
はぁ…コイツ等にまでバレちゃあ、今夜はまた派手に宴が始まるな…まぁコイツ等があの野郎の相手をしてくれんなら文句はねぇが、あのシスコンがミラーを離す筈ねぇ…
せっかくあの海楼石がちゃんとした形になり、ミラーの問題も解決したって夜にアイツを抱けねぇのかよ…加えて出航は明日ってか。ふざけんな。
『全く!!何でマトモな再会が出来ないかね!!』
やんなっちゃうよ!!苦々しく顔を歪め頭を抱える俺を余所に、ミラーはそんな悪態をつきつつ隅の方で小さくなっているあの猫の元へと歩み寄って行った。
『ん?どうした?ホラおいでー?』
その傍らにしゃがみ込み、腕を差し出すミラーを警戒する様に猫は顔を歪め後ずさる…随分と脅えているな。
「…ソイツはもう返せ」
重い頭を労りながらも、ミラーが伸ばす腕で光っている腕輪に手を掛け外しにかかれば、ロー?と俺の名を呼びながら、コイツは不思議そうな顔を向けてきた。
その呼び声に応える事無く、手早く取り外したソレを再び刀へと付け直す。
相変わらずミラーは首を傾げ、怪訝な眼差しを寄越してきたが…結局俺は、何も言わないまま立ち上がった。
ミラーがあの猫をエラく気に入ってるその理由は知らねぇが…脅えついでに爪でも立てられちゃかなわねぇ。
『うわッ、ビックリしたぁ!!』
未だあの野郎が白目を向いてブッ倒れてるその光景に、俺が何度目か分からない舌打ちを漏らすと同時…そんな声が響き視線をやれば、あの猫は幾らか落ち着いたのか、再び悠然とミラーの胸に落ち着いていた。
あのクソ猫…調子に乗りやがって…その様子にため息を漏らしつつ、俺と同じ様に重い頭を支えているペンギンへと歩み寄る。
「今夜はもう仕方ねぇ…出航は明日に延ばす。あの島ならアイツから進んで船を降りるだろう」
ついでにあの猫もアイツに押し付けろ。そう半ば投げやりに告げた俺の言葉に、何故かペンギンは顔を曇らせた。
「その事なんだが船長…さっき面倒な事になったと言っただろう?実は「ぜっったい嫌ぁぁぁ!!」…」
何やら深刻な声色で寄越してきたペンギンの言葉を掻き消す程、盛大に声を荒げたベポへと呆れ気味に視線をやれば…案の定、アイツはクルーにあの野郎の元へ無理矢理押しやられていた。