BOOK5

□No.30
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『はいッ!!ど・う・ぞッ!!』


ダンッ!!と勢い良くテーブルに、丸々3個分のレモン汁をタップリ搾った炭酸水を突き付け、私は新聞を読むペンギンさんにチョッカイを出してるジギーの正面へと腰を降ろした。


『まずは一個一個解決していこうねッ。で?最初の疑問は?』


すくい上げたシチューに息を吹きかけながらそう話を促す。肉の入ってないシチューは美味しさ半減だよ…


「アレがあそこまで不機嫌になった理由はなんだ。尋常じゃなかったろ?俺の所にまで流れるなんざ、ただ事じゃスッペ?!ミラーこれ何ジュース?!すっげぇスッペー!!」


ペンちゃんその珈琲一口頂戴!!なんて慌ただしいジギーに多少は私の怒りも鎮まり、とりあえず勝ち誇った笑みを向けといた。


その私特製レモンジュースには、砂糖なんて優れ物など入ってねんだよクソ兄貴。肉を食われた恨みは深海より深いんだ!!思い知ったかコノヤロー!!


「ミラー…日が暮れるぞ」


ふふふ…ってロー顔負けの口角上げを披露する私に、ペンギンさんがそんな呆れた視線を寄越した。


うん、これじゃ話が進まないよね。ごめんなさい。ジギーも柄になく、すんごい真面目な顔してたし…むしろ暴れる気満々オーラ全開だったし。


ちゃんと、大丈夫だよ。って言ってあげなきゃね。


『…多分ジギーが感じ取ったのは、あの時だと思うけど…ジギー、あれ?ってなったのって、いつの話?』


「あぁ?先週ぐらい?」


あれ、もちっと前か?そう、スッペ!!って顔のまま涙目を向けるジギーに、麦わらの…ルフィ達の船でお世話になった時の事を、ごくごく簡単に話した。


勿論、何でルフィ達の船に居候する事になったのかは言葉を濁して…濁しきれてないのは重々承知だけど。


──────ーーーー


『その時、あの海賊狩りが勝手にこの子使いやがってさー。いや〜あの時は焦ったよぉ。本当一瞬でスッゲェ不機嫌になっちゃうんだもん!!』


眉間に皺を寄せてポカーンとお口全開のジギーの隣で、そうだったのか…って目元に影を落とすペンギンさんも、私の話に聞き耳を立てていたらしい。


そう言えば、この話まだ誰にもしてなかったっけ?ま、もう大した問題じゃないし良っか。


『それからこの子がずっと不機嫌だったんだけど、ナミちゃ…麦わらのクルーが、海楼石の錠を海軍からくすねてくれてね?この前の戦闘でやっと首刈りに戻れたの!!』


ナミちゃん達元気かなぁ。にしても本当、ムカつく奴等だったなぁ〜この前の海賊団。そう顔色をコロコロ変える私が最後の一口を飲み干すと同時に、ドンッ!!とテーブルに手を付き立ち上がるジギー…


「ミラーお前…その話…本当なのか…?!」


俯いたままテーブルの上で握り締めたジギーの拳が震えている…え、何もしかして怒ってる?!


困惑気味に助けを求めるように視線を送るも、流石のエスパーペンギンさんにも奴が怒りに震えるその理由は分からないらしく、私同様首を傾げていた。


「麦わらって…麦わらって確か…!!」


バッ!!と持ち上げたジギーの顔が怖い…何こいつルフィ達とも面識があったの?!しかも何やら険悪な仲?!嘘そんな話聞いてないよ!!


「確かさ!!麦わらってあの、モコモコチビちゃんが居る所だろ?!抱っこしたか?!触ったか?!どうだったやっぱりモコモコヤホーイだったか?!うがぁー羨ましい!!」


えー。まじコイツないわー。


チキショー俺も会いてぇぞ麦わら!!の、モコモコチビちゃん!!なんて激しく頭を抱えだしたこの男と、家族辞めたい。


ってか私がルフィ達の船に居た理由は気にしないんだ。“偶々出会って私だけお世話になってきた”なんて、無理があるにも程があるのに…


コイツ、もしかしてシャチより馬鹿なんじゃないかってちょっと心配。


でもさっきまでの暴れる気満々オーラは、綺麗サッパリ消え失せてるから…コイツが馬鹿で良かったかもって、ちょっと安心。
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