BOOK5
□No.31
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「“素手相手に刀振りかざす様なインチキ野郎にはミラー没収の罰だ”…とさ。少なくとも今夜は…下手すりゃ奴が船を降りるまで戻れねぇかもな」
ふふ…な?理解不能過ぎて暴れたくなるだろ?なんて素の口調で、死んだ眼差しを向け口元だけで笑うペンギンと違い…俺は力強く目を見開き、これ以上に無い程眉を寄せ必死に頭を働かせていた。
意味が分からねぇなんてレベルじゃねぇぞオイ。最早何語なのかも分からねぇ…素手相手?刀?何の話だ一体…
あの野郎が俺とミラーを引き離そうと動くのは分かっていた。
どんな手段を使ってくるかと思えば…とことん、この俺を舐め腐ってるだろあの野郎。
わざわざあの野郎の不安を取り除く猶予を与えてやったと言うのに…どうやら俺は情けをかける相手を間違えたらしい。
それに言った筈だ。我慢してやるのは一日…それ以上は認めねぇ!!
“バリーンッ”
ひと息に飲み干した酒瓶を無造作に投げ捨て、口元から伝う液体を乱暴に拭い俺はゆっくりと立ち上がった。
「ペンギン…あのクソ野郎は今何処に居やがる」
そして静かに放った、俺の怒りを含んだその低い声を受けダルそうに腰を上げ始めたペンギンが、まだ浴場に居るだろう。と告げるや否や…俺が手にしたのは、その傍らに立て掛けていた自身の刀。
フフフッ…気を楽にして待っていろジロンギー。今テメェの身体をバラしに行ってるからよ…
純粋な殺意を携え俺は扉に手を掛けた。
───────ーーーーー
「船長、奴の所へ行く前に、甲板で細切りになってるシャチだけでも元に戻してくれ。アイツが皆の分も動くんだろ?」
足早に目的地へ向かう中、俺と肩を並べるペンギンから、流石にそろそろ働いてもらいたい。そんなボヤきが届いた。
「面倒くせぇな…もう少し待て」
今は一秒でも早くあのクソ野郎をバラしてぇ俺は、その申し出を受け入れる事無く甲板まで続く通路から逸れる方向へと足を向ける。
その瞬間、スッと俺の横でペンギンの影が揺れたかと思えば…
“ダンッ!!”
「船長、先に…戻してくれないか」
その行く手を塞ぐよう勢い良く壁へと片足を突き付けたペンギンが、優雅に腕など組みながら、不自然な程の笑みを俺へと向けてきやがった。
…確か、ミラーの奴がこの顔に訳分かんねぇ名を付けてたな。何だったか思い出せねぇけどよ。
にしてもダリィ…ウザったく邪魔しやが…あぁ、そういやコイツ…あの部屋の整理と共に“アレ”と一晩中一緒に居たんだったな。そろそろコイツも限界ってか…
「チッ…行くぞ」
怒りより、憔悴の方が色濃く浮き出ているペンギンの面にため息にも似た舌打ちを放ち、俺は仕方無しに踵を返し、まずは甲板へと向かう事にした。
全てが片付けばコイツに休みでもやろう…
壊れそうだから
(ミラーの奴は何してやがんだ)
(あぁ、多分洗濯室に居ると思いますが)
(バンッ!!)
(((グガァー…グゴォー)))
(チッ…)
(はぁ…よくこんな身体で気持ち良さそうに熟睡出来るなコイツ等…)
(…ROOM)