BOOK5
□No.33
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『ったくジギーの野郎…自分の洗濯物ぐらい、自分でゴシッ!!ゴシッ!!しろっての!!』
ってか、風呂入るついでに浴場で洗っちゃえば良いのに!!
(コレよろしくなー!!)
はぁ…しかもこの後絶対ジギーから…あぁぁぁぁ憂鬱。
『…逃げたい』
ガランとした洗濯室に響くのは、バシャバシャ跳ねる水音と、シャボン玉が割れる音…そしてそんな私の悪態だけ。
にしても…不味いよなぁ。色々不味すぎてもうドロドロ…
桶の中で、埃や砂でドス黒く濁った水を入れ直しながら、ボケーッと対策を考えるも…良い案など何一つ浮かばない。
(3日…いや2日だ)
はぁ…ローも絶対怒るよ…うわー2人から怒られるー。
…本気で逃げようかな。
─────────ーーーーー
『んぎぎッ!!おっも!!ぐッ…だぁ!!ハァハァ…疲れた…』
ドデッと今し方部屋に放り入れたこの迷惑兄貴は、未だ目を覚まさず夢の中。きっとそれは私が殴ったせいだけじゃない…うん違う違う!!違う…よね?
「フニャーン」
物珍しそうな顔でジギーの頬をプニプニする虎毛の頭を撫でながら、私がため息を漏らしていると…背後の扉が音も無く開いた。
「ウー…シャーッ!!」
『あ、ペンギンさんッ。早かったですね?もう終わったんですか?』
私を覆う影を見上げてそう声を掛ければ、ペンギンさんからは曖昧な返事しか寄越されず…代わりに伸びて来たのは、筋肉質なその腕。
「ミラー…わざわざ運んでくれた所悪いが、今夜ソイツは用具室で寝てもらう事になった」
預かるぞ。そう引き摺る様にジギーを雑に持ち上げたペンギンさんから流れ出るのは疲労感…
「俺はこの部屋を使えるように片付ける。ミラーは部屋に戻って、機嫌の悪い船長の相手だ」
お互い頑張ろうな?そう力無く笑うペンギンさんに苦笑を向けつつ、私が虎毛を抱き上げようと身をかがめれば、再び降りかかる黒い影…
「ソイツの寝床はコレだ」
そんな不機嫌な声が響くや否や、天から私と虎毛を遮る、少し大きめの木箱がドスン!!と…あ、虎毛消えた。
「ニャーッ?!」
“ガリガリガリガリッ”
虎毛が突然閉じ込められたその木箱の中から、必死に、出してーッ!!とくぐもった叫び声を上げ続けるも…ごめんね…私にはどうする事も出来ないの!!本当ごめーん!!
「じゃあミラー、船長は頼んだぞ?」
また明日な。そう最後に困った様な苦笑いを浮かべ、私の頭を撫でるペンギンさんに、おやすみなさい。って別れの挨拶…
「ニャーニャーニャーン…!!」
そして、背後の悲鳴に心を痛めつつ…私はペンギンさんと共にそれぞれ歩き出した。
そして一人寂しく、テクテク部屋までの道のりを真っ直ぐ進んでゆくも、何となく…何となくだけど、なんか違和感。
何かがおかしい。でも何だ?この違和感は…
“シーン…”
あ、分かった。静かすぎるんだ。
ペンギンさんもローも戻ったって事は、表の掃除は終わってる筈。皆後片付けでもしてんのかな?
でも後片付けって…あぁ、もしかしてローの奴、またバラバラ生首事件を甲板で繰り広げたとか?アレ捨てるの、時間掛かりそうだしなぁ。
うーん…今もまだ機嫌最悪だったらどうしよ…はぁ…憂鬱。
やだなぁ…と重い足を引きずりノロノロ向かった私達の部屋は、扉を開ける前から既に中に居る人物の不機嫌MAXオーラがダダ漏れ…
ローさぁん…勘弁して下さいよー。