BOOK5

□No.33
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「…いつまでも覗いてねぇで早く入って来い」


気配を消し、恐る恐る控えめに開けた扉の隙間から中の様子を伺っていると…ソファーの上に置かれていたジギーの荷物を乱暴に蹴り落とすローから、急にそんな言葉が寄越された。


やっぱり、ローには顔面以外にも目があると思う…あるよ絶対。


ソローッと室内へ身体を滑り込ませ、機嫌の悪い背中に向かって恐る恐る、あの〜…と遠慮がちに声を掛ける。


『ロー…ペンギンさんが物置部屋掃除してるって事は、私お引っ越し?』


ローがジギーに客間みたいなあの空間を与えるとは思えない。そんでもって、ジギーが大人しく私をこの部屋に置いてくれるとも…当然ながら思えない。


するとローは、あの野郎結局…なんて小さく漏らしていたかと思えば、次いで大きくため息を吐いた。


「はぁ…それは認めねぇ」


何でアイツが来たからってお前が移動しなきゃならねんだよ。そうブツブツ文句を言っているローは、真っ向からジギーに挑むらしい…流石俺様。


『じゃあ、ジギーにあの部屋使わせるの?』


「んな訳ねぇだろ」


え?それなら何でペンギンさんはあの部屋掃除してんのさ。


「…一日やる」


首を傾げる私を放置して、ドガッとソファーに腰を下ろしたローがそんな事を呟くから、私の首は更に傾いだ。


一日って?そう素直に疑問を口にすると、無表情のローから、こっちに来い。って言うように、人差し指をチョイチョイと…


その指示に大人しく従いローの隣へと腰を降ろす。すると次の瞬間には、その大きな手が私の頬まで伸びて来た。


「明日の一日は、俺も黙ってあの野郎にお前との時間をくれてやる。気が済むまでアイツと話しをしてやれ…ただし、日中だけだ」


夜の時間まではやらねぇ。そう不敵な笑みを浮かべるローが、頬を包んだその手の親指をゆっくりと私の唇に妖しく這わせてくるから…その手付きに身体がゾクゾクした。


『でッ…でででも!!ジギーがまた次の島まで乗せろって言ってきたらどうするの?!』


何となくこの不味い雰囲気に、私は慌ててローから距離を取りそんな言葉をズラズラと…流石にこのままじゃあ、スイッチ入っちゃうって!!


「お前、次の島までどんだけあると思ってんだよ」


俺が半月もの間、あの野郎を此処に置く訳ねぇだろ。なんて呆れながらもグイグイ私との距離を詰め始めるロー…だから不味いって!!


『ちょまッ?!ストップ、ストップー!!』


今にも私に覆い被さりそうな体勢のローを、グイーッと押し返す。何すんだよ。って睨まれたけど、その言葉…ソックリそのままお返しするわ!!


『今は駄目だって!!ジギーの奴、起きたら絶対此処まで乗り込んで来るよ?!無理無理絶対戦争になる!!』


ローとイチャコラ素っ裸なんて目撃された日にゃあ、確実にアイツ…破壊人と化すから!!


“カチッ…”


『んへ?!』


「心配すんな…あの寝不足野郎なら当分起きねぇよ」


手早く取り付けられたあの腕輪に困惑する暇すら与えずローが、ローがッ!!揉んじゃってるよこの人?!人の乳揉んでますけどー?!


「…だがそれも悪くねぇな。なんならアイツの目の前でヤるか?そろそろアイツも妹離れするべきだろ」


『目のッ?!』


それは私が嫌だっての!!何が悲しくて血の繋がった兄貴に、自分の性事情知られなならんのさ!!だから退いて、押し倒すなー!!


「フフッ、いい加減諦めろ」


『ちょ本当無理それだけは本気で不味いから!!ローさーん?!はーなーしーてーッ!!』


服の上から私の胸をまさぐるローの手を必死に引き離す…


『んッ?!』


なーんて抵抗が出来たのは、ほんの数秒。


近付くローの唇が私の唇を捕らえたその瞬間…易々と侵入して来た暖かいその舌の熱に冒され、最早“求める”以外の思考が完璧ショート。


「誰が手放すかよ…」


ローが乱暴に服を投げ捨てながら私の胸元に顔を寄せる際、その口から漏れた苦しそうな呟きは、必死に声を押し殺す私にまでは届かなかった。
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