BOOK5
□No.35
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“ガチャッ”
ふぅ〜、相変わらず広い脱衣場だな。
「ったく…別にミラー自身が本気でお前を降ろしたいと思ってる訳じゃない事ぐらい、分かってるだろ」
いや何でコイツ、当たり前のように中まで着いて来てんの?背中流せってのは冗談なんだけど。
「何の前触れも無くいきなり現れりゃあ、困惑ぐらいするさ」
パンツ脱げねぇじゃん。しゃーねぇ…とりあえず頭に付いた埃落としとくか。カガミ鏡っと。
「ただなぁ…何故お前はこうもタイミングが悪いんだ」
うおメッチャ埃被ってんじゃん?!きったねぇ!!
「船長も今はお前と…はぁ、とにかく今回は諦めて早めに降りろ」
あ…やっべぇ、ミラーが敵に回ったら、俺を引き止めてくれんのって…あのアホっぽいクルー共しか居なくね?うわ超不安!!
チッ…あの不健康野郎を説得させてから、ミラーに言うべきだったな。
「おいジロンギー、お前聞いてんのか?」
さっきからブツブツうるせぇペンちゃんは、どうすっかなー…なんて、ボケェっと此処に居座る算段をする俺を背後からいきなし、ゴンッ!!て殴りやがった。
「いってぇ…いきなり何だよ」
「…貴様は俺の頭をカチ割りてぇのか」
勘弁しろよ。なんて珍しく憔悴しきった顔をするペンちゃんを心配してやったら、テメェが原因だ。ってまた殴られた。
「むっかー!!少しは俺を労れこのクソ鳥野郎!!本当は飛べねぇくせに飛べますみたいなデケェ顔してんじゃねーぞ!!」
「あぁ、出来ればその呼び名を定着させろシスコンカス。言っただろ…タイミングがわりぃんだよ」
ウザッてぇ貴様の下船を望んでんのは何も船長だけじゃねぇ。なんて涼しい顔してサラッと暴言かましやがって!!この野郎、ずえーったい性格わりぃから!!根は極悪腹黒ペンペン野郎だ!!
…ん?でも待てよ?
「なぁペンちゃん、あの野郎が今すぐにでも俺を引きずり降ろしてぇのってさー…」
(船長も今はお前と…)
さっきは途切れたその言葉。それに続く筈だったのは“会いたくねぇ”か?それとも…“会えねぇ”か?
「もしかして、チョーッピリ罪悪感ってのが…有ったりしちゃうからだったりすんの?」
ニヤニヤして反応を伺う俺の言葉に、ペンちゃんは一瞬ピクッと眉を寄せるも…その苦々しい顔はすぐ帽子の影に隠れた。
つまりは、図星…って事ッスね?
「ふふ、ふひひッ……」
それと同時に俺の中で、ピコーン。と瞬く悪事電球。
「ふひひ…ひひッ!!わりぃなペンちゃん…」
さぁ、俺の為に働いてくれ。