BOOK5

□No.37
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室内を舐めるように見渡し、恐る恐る俺に続くミラーは…何故こんなにも、奴との接触を拒む?


ドサッと乱暴に荷物を放り、ミラーに猫を箱に戻すよう告げれば、ミラーは最初こそ小さくゴネたが…俺の冷厳な態度に大人しく従ってくれた。


昨夜、自身の手で整頓したベッドへと腰掛け、隣に…そう無言で促す。


「ミラー…何故アイツに会いたくないんだ?」


素直に腰を落ち着けたミラーへと、真っ直ぐそう問い掛ければ、いきなり何だ?と言ったように困った顔をされてしまったが…


俺はこの混迷した頭を早く鎮めたい。


「あの時、甲板で船長に何を言ったんだ?」


その疑問に対する俺の考えが間違っていなければ…俺は大きな間違いを冒している事になる。


『…ローには内緒ですよ?』


悪事が暴かれ、不貞腐れた子供のように口を尖らせたミラーはそう前置きを入れ、静かに言葉を紡ぎ始めた。


───────ーーーー


『多分食堂で話してた時は、ペンギンさんが居てくれたからジギーも大人しくしてたけど…』


怒る気満々なんで、アイツ。そう言って顔を背けるミラーは嫌そうに眉を寄せている。


成る程な…俺はそっから間違ってたって事か。


『だからローにバトンタッチしたんです。勿論、バラすのは無しって方向で!!』


上手く話し進んでますかねぇ。なんてソワソワ扉の先を見やるミラーを余所に、俺は、ふぅー…と軽く息を漏らし、天を見上げる形で腕を背後に投げ出した。


『あ、ペンギンさん!!この話、絶対ローに言っちゃ駄目ですよ?!』


その願い出に対し俺が向けたこの苦笑いを、ミラーがどう受け取ったかは分からないが…コレには、全て手遅れだ。って意味しか含まれていない。


…ソレを感じ取るのは無理だろうな。


『ローをダシに使ったなんてバレたら…しかもゾロの事まで怒られちゃう!!』


はぁ…今回一番ダシに使われたのは俺だよ。にしてもミラーは少し、怯え過ぎじゃないか?今回の事は全てミラーが悪いという訳ではないだろう。


膝を抱え込み、大袈裟に身体を震わせて見せるミラーを尻目に、俺は漸くスッキリ纏まったこの頭にひと息ついた。


…媚び売ってでもこの船に居座りてぇ筈の男が、あんなにも挑発して来たのは…ミラーを味方に付けれねぇと分かっていたからか。


あわよくば無抵抗の中一発もらって、療養だ何だと理由を付け長居するつもりだったのだろう。こっちが手を出したとなったら、ミラーも肩入れしてくれるだろうからな…


( 無駄骨で終わらず良かったな )


ジロンギーの思惑も、ミラーの心情も分かっていながら、尚もアイツを置く気なのは…ったく自分が楽しむ為かよ。


はぁー…と大きく吐き出した俺のため息に、隣でのんびり相棒を撫でていたミラーが、どうしたんですか?なんて危機感の無い顔を向けて来た。


知らぬが仏って言葉もあるしな…まぁ、嫌でも知っちまう事になるんだが。


「俺も…少しは助けに入ってやろう」


そう変わらず苦笑を張り付けたままミラーの頭へと手を伸ばす。当の本人も相変わらず呑気に首を傾げていた。


『ペンギンさん?…あ、そう言えばペンギンさん、ローにジギーを置いてくれって言っちゃいまし「おせぇぇぇーッ!!」うげッ』
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