BOOK5
□No.32
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締め切ったカーテンの向こうで、カモメが朝の挨拶を交わしてる…どうにか俺は無事、この夜を抜け出せたみたい。
“……ゴクリ…”
昨日は一睡も出来なかった。
いや、本当は眠たくなかった訳じゃないんだよ?今だって、必死に重たい瞼を持ち上げてボンヤリする頭をブンブン…
でも寝ちゃダメなんだ…ダメなんだ!!
「……ハッ!!」
だって、だってだって…!!
「ざっけんなクソッタレヤローッ!!」
ヒィィーとうとうあの悪魔が目を覚ました!!
「ぶえーっくしゅ!!ズビビッ、だーッもうムズムズすらぁ!!」
…今、この船で一番安全な所?
“ブルブルブルッ”
そんな場所あれば、今すぐ俺が教えてほしいよ。
「オイゴラァ!!出てこいクソガルファー!!」
……今、この船で俺の味方をしてくれる人?
“ガクガクガクガクッ!!”
それが居ないから俺は、暗い部屋で一人スッポリ頭からシーツ被ってガクブル震えてるんだよ!!
まだ遠く微かに響いてくる声…距離があるにも関わらず、ソレが俺の耳まで届いた瞬間…一気に総毛立って、寒くもないのに身体の芯からもう震えが止まらない。
「よくもこの俺様を、あんっなキッタネェ用具室に押し込みやがったなー?!」
うーッ!!どうしよう少しずつ声が近付いて来てる!!
“ガクブルガクブルガクブルッ!!!!”
アイツに捕まったらきっとまた…ヒィィィ考えたくもない!!
キャプテンの所に行きたいミラーと一緒に居たいよーッ!!
(自分自身でやり過ごせ)
やっぱり無理怖い!!キャプテンの鬼!!悪魔!!
…言い過ぎちゃったスイマセン!!
でも皆はアイツと仲良くする気満々だし、ペンギンだって、アイツの居場所作るなんて言い出すし…
きっとキャプテンは、アイツを追い出してくれるだろうけど、今一緒に居てはくれないし…
ミラーは俺を助けてくれるだろうけど、多分アイツを追い出したいとは思ってないだろうし…
あーもうッ!!俺は一体どうすれば良いの?!
だいたいアイツの機嫌が悪いのがいけないんだ!!昨日なんて、気絶してたくせにイライラオーラ全面に出しちゃってさ!!
アイツが大人しくしてるなら、俺だって別に…いや、アイツが居たらミラーも喜ぶだろうし…それに、ちょっと触るぐらいなら…
「うぅー……う?」
あれ、いつの間にかアイツの声、消えた?
“チラッ……チラッ?”
「………ふぅ」
覆い被さったシーツの中から、恐る恐る顔を出す。
そしたら蒸れた熱気が逃げ出して、ヒンヤリ涼しい空気が汗ばんだ俺の頭を冷やしてくれた。
本当…どうすれば良いの?
そういえばペンギン…昨日の“アレ”キャプテンに怒られなかったのかな?