BOOK5
□No.32
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逃げるように飛び出した甲板の先には、今にもこっちに乗り移ろうとしてる奴等の姿が…
でも、俺にとって本当の敵はコイツ等じゃない。
だって…
「っしゃー!!サッサと終わらせっぞ!!」
「「「ガッテンでい!!」」」
いつもに増して皆がイキイキしてるんだもん!!絶対皆この後…ブルルルゥ!!
もうヤダ…ってブルーな俺は、動き回る気にもなれなくて、乱闘が始まった甲板から遠ざかって扉の影で頭を抱えて悶えてた。
そしたら船内の方から足音が2つ…
「あッ、キャプテーンッ!!」
普段通り涼しい顔を浮かべてはいるけど、薄ら不機嫌オーラが滲み出てるキャプテンの胸元に、俺は勢い良くドンと飛び込んだ。
キャプテンならアイツをすぐ追い出してくれるよね?!だってアイツ、敵意プンプンだったし!!
そう思って、このどうしようも無い状況から助け出してもらおうとキャプテンの腕にすがりついたら、離れろ。って言うようにその腕をグイーッて…キ、キャプテン?
そのまま突き放された俺は、通路の端っこでズーンと項垂れながら抜け殻状態…
「キャプテン…アイツを、此処に居させるの?」
つい漏れた俺の呟きは、ビックリする程か細く弱々しかった。そしたらキャプテンは面倒臭そうにため息を吐きながら、馬鹿言うな。って…そっか…キャプテン……ん?キャプテン?
「え、じゃあ…!!」
思ってたのと違うその答えに、ガバッと起き上がって見上げるキャプテンの顔はムスッとしてた。
「俺はアイツを置いてやるつもりなんざねぇ」
「ッ!!」
またダルそうにため息を吐き出すキャプテンから、キッパリ言い放たれたその言葉に俺もう大興奮!!ヤッタヤッタヤッター!!
「船長、さっきも言ったが…奴の目的を考えれば、あまりこちらから実力行使に出るのもどうかと。下手すりゃ連れ出され兼ねないんですよ」
飛び跳ねて小躍りする俺を避けながら、ペンギンが何かキャプテンと話し出したけど、俺今それ所じゃないの!!
だってこれで俺、グチャグチャにされずに済むよね!!良かったぁ…本当良かった!!
「………あぁ?何でそうなるんだよ」
ハッ!!でもミラーはアイツとイッパイ話したかったりするのかな…
「船長だってアイツに、必要最低限の時間は与えるつもりでいるんでしょう?変に話がズレ、今船長と同室だなんてバレたら面倒です」
いや…そんな事無いよね!!
「そんな理由なら尚更必要ねぇ」
だってミラー怒ってたし。アイツも怒ってたし。俺丸裸にされたくないし。
「連れて行くと言い出し兼ねないこの現状で、更に刺激を与えるのはどうかと。せめて寝床だけでも作っておけば…」
何よりキャプテンが降ろすって言ってるんだもんッ、大丈夫!!そう鼻息荒く自分の考えを肯定してる俺の耳に、物凄く重たい舌打ちが響いた。
「…キャプテン?どうしたの?」
恐る恐るソレを漏らしたキャプテンの方へと向き直る。
そしたら面倒臭そうに首を鳴らすキャプテンの口から、勝手にしろ。なんて言葉が…どういう意味?
「だが必要ないとだけは言っておく…別にアイツがその気なら、俺もソレに応えるまでだ」
不敵に妖しく笑ってそう言い放つ船長に、それもそうですね。なんてペンギンも意味深な笑みを向けてる。
…ちゃんと話、聞いとけば良かった。