BOOK5

□No.38
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「随分と楽しそうですね」


ベポの部屋を出るや否やため息と共に、口元がゆるんでますよ。なんて呆れ声が耳に響いた。


その声の方へと視線を這わせば、扉のすぐ横で腕を組んだペンギンが壁にもたれ、真っ直ぐ俺を捉えている。


まだ彷徨いてたのかよ。そう呆れ笑う俺に向かって吐き出されたのは、俺と同じニュアンスを含んだ軽いため息…


「俺が奴の荷物を運び出す事を見込んで、真っ先にあの部屋へ向かわせましたね?」


ふん…気付いてんなら、いちいち突っかかるな。


「望みの言葉は聞けたか?」


「…えぇ。奴らしい謝罪を述べられましたよ」


不貞腐れたように煮え切らない顔をしているペンギンの横を過ぎ去る際、そりゃ災難続きだな。そう肩に手をやり歩き出す俺の背を追うコイツの用は、どうやらまだ終わってはいないらしい。


「何故アイツが、不満の矛先をミラーに向けると?」


投げ渡されたその声に首を背後へと回せば、交わったその視線には純粋な疑問が浮かんでいた。


「フッ…簡単な事だ」


そう笑い首を戻し歩き出す俺の背中を、ペンギンは黙って追ってくる。俺からすりゃ、こんなにも容易い答えを導き出せねぇ方が不思議だ。


「…お前ならどうした」


そう尋ねる俺は、コイツがどんな答えを出すのかに多少の興味があった。同じ様な状況に陥った時、コイツならどうするのかに…


振り返る事無く放った言葉にペンギンは、俺ですか?そう不満気に声をくぐもらせながらも、俺なら…と続けた。


「元凶である相手を…ロロノアの奴を消しますね」


そうキッパリ言い放つペンギンの声には、微かな怒気が滲んでいる。


「…それで終いか?」


そのままプツンと途切れた声に背後へと視線をやれば、他に何を?そう言うように眉を寄せた面があった。


「フフッ…普段は口うるせぇお前も、いざとなりゃ甘ぇんだな」


「…誉め言葉として受け取っておこう。少なくとも、あんなに怯える程の叱り方はしないですよ」


アイツもそうだと思っていた。そう納得いかぬ様子の声は次いで、今回のアレは多少の不可抗力もあるだろう。そう言葉を続ける。


「確かに、牙を持ち出されたミラーにも非はあるが…飽くまでも原因はあの野郎だ」


一人考え込むように零れ出たその言葉に、俺の足はゆっくり止まっていった。


「ぬりぃな…」


そしてボソッと漏らしたその呟きを聞き逃したペンギンが俺と肩を並べ、何か言いましたか?と、俺を覗き込む。


「ッ?!…何が、面白いんですか」


そして、より一層口元を妖しく歪めたこの顔を見て、訝しむようペンギンは抑えた声を寄越した…何が面白いかって?


「フフッ…重要なのは過程じゃねぇ。他の野郎に触れさせたっていう、その結果だ」


俺の許可も無しに…


「勿論麦わらん所の野郎にも礼はさせてもらうさ。だがまずは…キッチリ教え込まねぇといけねぇだろ?」


テメェは誰のもんなのかって事を。
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