BOOK5
□No.40
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『勿体無いですよ…私は、私はローと同じぐらいッ、皆の事を世間に!!政府に認めてもらいたいです!!』
だって皆こんな凄いのに!!そう声を荒げ詰め寄る私に、ペンギンさんは驚いたように目を見開いて、次いでフッと優しく微笑んだ。
「ありがとな。俺達は…少なくとも俺は、誰か一人でもその実力を認めてくれてりゃあ充分だ。だからミラー…お前が居てくれれば、それで良い」
ポンポンと、あやす様に私の頭を撫でてくれるペンギンさん。
『………』
なんでこの人はいつも、他人を優先させてしまうんだろう…
「ミラーにはミラーの目的がある。お前は俺等と同じ“影”に入る人間じゃない…船長に負けないぐらい、その顔を売っておけ」
まぁ、あまり売り過ぎると船長がまたうるさいがな。なんて笑うペンギンさんは本当、どこまでも出来た人間だよ…こんな人に慕われて、ローも凄い幸せな奴だ。
『…ローはこの事、知ってるんですか?』
その質問に、予想はしてたけど…案の定、かぶりを振るペンギンさん。
「それなりに気付いてるとは思うがな。それでも好きにさせてくれてるよ」
どこか気恥ずかしそうに笑うペンギンさんの顔は、最高に眩しかった。
多分だけど…この話をローにしたら、きっとアイツも同じ顔して笑うんだと思う。
うん…ちょっとだけフィルターかけちゃったな。ローにこんな爽やかスマイルは厳しい。
『ペンギンさんは…もう少しワガママになるべきです』
ちょっとだけムスッと頬を膨らませそう漏らす私に、ペンギンさんが、我が儘?ってな感じに首を傾げた。
『ペンギンさんは、人に幸せを与えすぎです!!もっと自分の為に動いて良いんですよ?!』
天使役はベポに任せましょう!!なんて鼻息を荒くまくし立てれば、キョトンとしていたペンギンさんの顔が、クシャッと崩れて…
「天使ってお前…ふふ、そうだな。確かに俺は天使かもしれない。まぁ、頭に“ぺ”が付く方だがな」
ぬ?頭にぺ?…ぺ?………あぁ!!
『ペテン師?!』
それが俺に似合いだ。なんて可笑しそう笑うペンギンさんは、相当ツボに入ったらしい。不満気に眉を寄せる私を放置して、未だ激しく肩を揺らしてる。
「ふふ、納得いかないか?そうだなぁ、じゃあ手始めに一つ…実はさっきの話、大半は取って付けたようなモノなんだ。それらしく聞こえるようにな」
『…え?ツナギの話ですか?』
どゆ事?!じゃあこれまでの話は何だったんだ!!
「俺が元々素顔を隠してたのは、顔が割れてない方が何かと裏で動き易いからだったんだが…いつの間にかコレが浸透してな」
ははは。と軽く笑うペンギンさんは、呑気に言葉を続ける。
「別にこの姿は強制してる訳じゃない。そもそも、それカッケー。なんて言ったシャチが俺のスタイルを真似たのが発端だ」
なる程…その時の情景が容易く目に浮かんでくるよシャチ君。
「そしたら他の奴等も真似しだしてな。海賊らしく、その首に賞金を懸けたいなら辞めておけとは言ったんだが…結局コレが一番動き易いんだと」
生憎此処の奴等は、馬鹿しか居ないようだ。なんて苦笑するペンギンさんは、その少し呆れた口振りとは裏腹に嬉しそうな目をしていた。
『ふふ、それなら皆に紛れちゃえーって思ったんですか?』
そうだな…そう優しく目を細めるペンギンさんと共に甲板の扉をくぐる。
ペテン師だなんてウソっぱち…結局、過程はどうあれ、皆がローを支えてるって事に変わりないんじゃんね。
「身体冷やすなよ?」
『ふふ、大丈夫です!!』
時折強く船を揺らす風は少し冷たかったけど、私の心はホッコリとしていた。