BOOK5
□No.43
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「フーワフーワピ〜モーフモー、フ…プゥ……」
"ジャーーーー"
「…………」
この静かな空間には、俺が立てる物音以外…何も耳に入ってこねぇ。
“ガシャンカシャパリーン!!”
「………チッ」
また皿が割れた。此処でこのウザッてぇ音を聞くのも、確かこれで通算8回目。
“パリーン…”
…記録更新9回目。
「はぁ…ダリ」
足元で、見るも無残に砕け散ってる破片を、適当に足でチョチョイとかき集める。
ってかさ…なんで俺大人しく皿洗いなんかやっちゃってんの?
ボーッと考え込むも、思うように頭が働かねぇ。たった数分前の記憶もねぇとか…俺末期じゃん。
「…あり?」
何で既にあそこでも、大量の割れモンが袋に山積みなってんだ?昨日までに俺が割っちまったヤツはちゃんと、バレねぇように海にバイバイしてやったし…
あぁそうか、他の野郎か。誰だよ割りやがったの…まぁ良いや面倒くせぇ。
「はぁ……ねみぃ」
此処に来て何日経った…朝っぱらから夜遅くまでコキ使われまくって何日だ…?
マジで、完っ璧舐めてたわ。
(コイツに手を貸した奴は一週間飯抜きだ)
あのクソ野郎…
(まずはコレ、運んでもらっても良いッスか?)
布団だけじゃねーのかよ!!
(サボリやがったら有無を言わさず叩き降ろすからな)
あームカつく。あームカつくあの飛べねぇクソ鳥!!
(良かったねジギー。ローが許したんだから、シッカリやりなよシッカリ)
ミラーの奴まで俺を売りやがって…
(やる事やったら幾らでも時間をやるって言ってんだろ。ミラーとの時間が欲しいならサッサと終わらせろ)
クソガルファーの野郎…やる事多すぎて終わる訳ねーじゃねぇか!!毎日終わった頃にはソッコー爆睡だっての!!
「はぁ……うげッ?!」
シンクに腕を預け項垂れれば、チャプン…と波紋を作る樽に貯まった水面に映る自身の顔は、酷くやつれきっていた。
このままじゃ俺も万年不健康野郎と同じ顔になっちまう…
「……はぁ」
いや、俺こんな事してる暇ねんだって。
そうだよだから何でこの俺が…孤高のイカした一匹狼のこの俺が!!おかしい、絶対おかしい!!
「っだーもう無理!!ムリムリ本当ムリー!!」
やってらんねー!!って、手に持ったスポンジをポーイ!!
何で俺こんなに大人しく奴等の言いなりになってたんだっけ…どうした俺、いや本当どうした俺!!
重く気怠い身体をユラユラさせながら食堂を去る中、自分自身納得のいかねぇソレにウンウン唸り声を上げながら、頑張って消えた記憶を遡る。
「……あぁ、そうだ」
思い出したわ。そうだよそう…俺が我慢の限界バッコンしてバーストしそうになると、毎回決まって…
(アイアイー、ちゃんとやってますかー)
プリティーキュートなモフモフ天使がやってくんだったー!!
(えー、真面目にやらないヤツはねー、キライダナー。オレ、キライダナー)
んな事言われちまったら、やるやるヤルに決まってるー!!って答えしかなくね?
(シッカリやる事終わらせたら、今夜一緒に寝てあげない事も無い事無いんだけどなー。ドウシヨウカナー)
毎回毎回その言葉に釣られ、必死こいて限界突破まで頑張っちまった!!しかも夜になってっと、俺自身疲れ過ぎてその話忘れてっし?!マジ勿体ねぇ!!
「…あれ?無い事無い事無い…ナイ事無くて…ナイ事ナイ事ナイ?あり?それって結局どっちだ?」
…もしかして俺…上手い具合にコロコロ転がされてね?モフモフ天使のプニプニ掌でホイホイ転がされてね?
…でも怒れねー。