BOOK5

□No.43
1ページ/4ページ



「フーワフーワピ〜モーフモー、フ…プゥ……」


"ジャーーーー"


「…………」


この静かな空間には、俺が立てる物音以外…何も耳に入ってこねぇ。


“ガシャンカシャパリーン!!”


「………チッ」


また皿が割れた。此処でこのウザッてぇ音を聞くのも、確かこれで通算8回目。


“パリーン…”


…記録更新9回目。


「はぁ…ダリ」


足元で、見るも無残に砕け散ってる破片を、適当に足でチョチョイとかき集める。


ってかさ…なんで俺大人しく皿洗いなんかやっちゃってんの?


ボーッと考え込むも、思うように頭が働かねぇ。たった数分前の記憶もねぇとか…俺末期じゃん。


「…あり?」


何で既にあそこでも、大量の割れモンが袋に山積みなってんだ?昨日までに俺が割っちまったヤツはちゃんと、バレねぇように海にバイバイしてやったし…


あぁそうか、他の野郎か。誰だよ割りやがったの…まぁ良いや面倒くせぇ。


「はぁ……ねみぃ」


此処に来て何日経った…朝っぱらから夜遅くまでコキ使われまくって何日だ…?


マジで、完っ璧舐めてたわ。


(コイツに手を貸した奴は一週間飯抜きだ)


あのクソ野郎…


(まずはコレ、運んでもらっても良いッスか?)


布団だけじゃねーのかよ!!


(サボリやがったら有無を言わさず叩き降ろすからな)


あームカつく。あームカつくあの飛べねぇクソ鳥!!


(良かったねジギー。ローが許したんだから、シッカリやりなよシッカリ)


ミラーの奴まで俺を売りやがって…


(やる事やったら幾らでも時間をやるって言ってんだろ。ミラーとの時間が欲しいならサッサと終わらせろ)


クソガルファーの野郎…やる事多すぎて終わる訳ねーじゃねぇか!!毎日終わった頃にはソッコー爆睡だっての!!


「はぁ……うげッ?!」


シンクに腕を預け項垂れれば、チャプン…と波紋を作る樽に貯まった水面に映る自身の顔は、酷くやつれきっていた。


このままじゃ俺も万年不健康野郎と同じ顔になっちまう…


「……はぁ」


いや、俺こんな事してる暇ねんだって。


そうだよだから何でこの俺が…孤高のイカした一匹狼のこの俺が!!おかしい、絶対おかしい!!


「っだーもう無理!!ムリムリ本当ムリー!!」


やってらんねー!!って、手に持ったスポンジをポーイ!!


何で俺こんなに大人しく奴等の言いなりになってたんだっけ…どうした俺、いや本当どうした俺!!


重く気怠い身体をユラユラさせながら食堂を去る中、自分自身納得のいかねぇソレにウンウン唸り声を上げながら、頑張って消えた記憶を遡る。


「……あぁ、そうだ」


思い出したわ。そうだよそう…俺が我慢の限界バッコンしてバーストしそうになると、毎回決まって…


(アイアイー、ちゃんとやってますかー)


プリティーキュートなモフモフ天使がやってくんだったー!!


(えー、真面目にやらないヤツはねー、キライダナー。オレ、キライダナー)


んな事言われちまったら、やるやるヤルに決まってるー!!って答えしかなくね?


(シッカリやる事終わらせたら、今夜一緒に寝てあげない事も無い事無いんだけどなー。ドウシヨウカナー)


毎回毎回その言葉に釣られ、必死こいて限界突破まで頑張っちまった!!しかも夜になってっと、俺自身疲れ過ぎてその話忘れてっし?!マジ勿体ねぇ!!


「…あれ?無い事無い事無い…ナイ事無くて…ナイ事ナイ事ナイ?あり?それって結局どっちだ?」


…もしかして俺…上手い具合にコロコロ転がされてね?モフモフ天使のプニプニ掌でホイホイ転がされてね?


…でも怒れねー。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ