BOOK5
□No.43
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今度またモフモフ天使があの可愛い顔持ってきて、やってるー?なんて事言ってきやがったら、ムギュムギュのギュニュギュニュにしてやらぁ。
その感触を妄想しながら、ウヘヘ。と一人ニンマリ笑う俺が、シッカリしねぇ手付きでガチャッと開けたのは…浴場の扉。
言っておくけど、風呂掃除なんてクソ真面目な事しに来た訳じゃねーよ。
勿論狙いは…ホカホカ綺麗な一番風呂!!
つい先日俺が、この俺様が!!素人技全開で塞いでやったあの穴の痕を尻目に、タオルをチョチョイと引っ張り出す。
ペンちゃんの野郎も、お前意外…でもねぇが、本当不器用だな。なんて不満垂れるぐれーなら自分でヤレっての!!
「ったー…こんな凝ったの、初めてかもしんねぇ」
バキバキに固まった肩を回しながら、とりあえず厚手の上着を一枚脱ぎ去る。その下は早くもタンクトップ姿な俺…寒いっての。
「ブルルゥ!!ったくよー…いつもは冬島なんざ避けに避けまくってっから、暖けぇ服とか持ってね“カラ〜ンバシャッ”…はぁ?」
ブツブツ文句漏らしながら、腰に巻いてる相棒入りのベルトを外しにかかっていると…信じられねぇ事に、先客を告げる反響音が、一つ壁を挟んだ向こう側から届いた。
「………いやいやいや」
ふっざけんなッ!!誰がこんな真っ昼間っから、優雅にホカホカ綺麗な一番風呂満喫してやがる!!
ただでさえギリギリラインだった怒りメーターが、今ので瞬時にブッ飛んじまった俺は、半分外れかかったベルトもそこそこ…湯気が籠もるその扉の向こうへと勢い良く踏み込んだ。
「ゴラァ?!だぁぁれだこの俺を差し置いてルンルン気分の一番ブボハッ?!」
バコーンッ!!と派手な音を立てて、何かが俺の顔面ヒットーッ。
視界の悪いその正面からブッ飛んできたその何かとは…カラン、と俺の足元に転がってった、あの手桶で間違いねぇだろう。
顎がイテェよクソ野郎…これ、クリティカルヒットじゃね?
あ、やべ倒れる。
普段の俺ならこれぐらいでアボンなんざならねぇが…あー、タイミングが悪かったな。
死ぬ程眠い上にこの蒸気…良い場所ドンピシャぶち当たったアレのせいで、本当の限界越えたわ。
も〜どーでもイ〜や〜。そう自ら望んで意識を手放そうとする寸前、モクモク立ち込める湯気の奥で、慌ただしく動いたのは…確かに人影だった。
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「グゴォーグスピー…ゴガァー、うぬぅ…」
…なんか…窮屈…
“ガチャリ”
『はぁー…あれ?…あへッ?!ジギー?!』
何処行った?!なんてウルセェ声に、少しずつボヤケた視界がクリアに…なってんのか?何か暗ぇんだけど。ってか動けねんだけど。
『ローッ、ジギーがどっか行っちゃった!!』
「知らねぇよ面倒くせぇ」
…あのアホはそのままにしとけ。なんてダルそうなその声に、なにぃ?!と無理矢理身体を起こせば、目の前にあった壁らしきモノが、ポーンッと勢い良く吹っ飛んだ。
『うわビックリした!!え"、まさかジギー…そこにはまり込んでたの?!』
だからそのままにしとけと言っただろ。そう一段と面倒臭そうに吐き捨てたあの野郎が、吹っ飛んだベッドを軽く足で受け止める。
どうやら俺は、ベッドと壁の狭い隙間で爆睡こいてたらしい。
「クガーッ…と、んーなんだかイマイチ疲れが抜けねぇな」
解放された身体を思い切り伸ばせば、背骨がゴキゴキ凄い音を立て…ってか寒ッ?!うわ何で俺タンクトップ?!
『そんな事より体調は?どっか痛い所とか悪い所ある?』
一目散に俺はさっき吹っ飛んだあのベッドまで突っ走り、ブルブル震えるこの身体をフカフカ布団で覆い隠す。
『ねぇ、ちょっとジギー!!』
すぐ傍でダルそうに腕を組み俺を見下ろすクソガルファーに向かって、何で俺こんな姿なんだよ殺す気か?!なんて喚き散らしてたら、何故かミラーがブチギレだした。
『私の話聞いてた?!』
「………モチロン」
何この、聞いてなかった。とか言ったらまたキレられそうなピリピリ雰囲気。
『だいたい、そんな格好してた自分が悪いんでしょ?!まさか覚えてないとか言う訳?!』
は?俺がワリィの?…なんで?
「…あッ、そーだよ思い出した!!」
あんの野郎ッ、俺に手桶なんざブン投げて来やがって!!
記憶を遡り思い巡らす俺の脳裏に浮かんだあのシルエットに、もう怒り奮闘!!プンスカプンだ!!
…でも誰だったんだよあの野郎!!