BOOK5
□No.42
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「なぁシャチ…お前、分かってる?そんな顔してる余裕あんの?」
「ん〜?なにが〜?」
「…はいはーい、シャッチャンまたドンケツ決定〜。しめて5万ベリーになりまーす」
…あ、本当だヤベェ!!いつの間にか俺超負け越してる!!
「ボケッとニヤニヤしてっからだよ気持ちわりぃ」
皆ポイッと手持ちのカードを投げ出すなり、俺に向かって、オラ早く出せよ。なんて半ば脅し気味に腕を寄越す。
渋々取り出した財布はもう随分痩せ細って…俺の小遣いが…
「はぁ……あ、5千ベリーしかねぇや」
「「「あぁ?!」」」
うわちょ、皆コワ?!
「よーよー兄ちゃん、こんだけ清々しく負けといて、そりゃあ通用しねんじゃね?」
「雑用もしねぇ金も払わねぇとは…随分お偉くなったじゃねぇかシャッチャンよぉ?」
「それ桁違うじゃないッスか…あ、俺立て替えとかやってないんで。自分で工面して下さいね」
どーすんだよオラァ!!って極悪面並べて凄んでくるコイツ等にたじろいでたら、隅っこで一人静かに本読んでたペンギンから助け舟…
「テメェの部屋に居るブタを割りゃあ、8万ベリー程は出てくるんじゃねぇのか?」
じゃなかった!!何でペンギンが俺のゴールデンピッグの存在知ってんだ?!
「「「んじゃその中身引きずり出して来いや!!」」」
「ハッ、ハイィィ!!」
金が絡むと皆目の色変わり過ぎだろマジで!!賭ポーカーとかするんじゃなかった!!
ダッシュダッシュで飛び出す俺と入れ違いに、ベポがニッコニコしながら甲板に入っていったのを気にする余裕も無くダッシュ!!
「…はぁ……」
途中でひと息ついて、ズーンと落ちつつトボトボ部屋へと向かう。
「…ん?」
そんな中、たった今バタンと閉められた扉の前にミラーが立ってるのが見えて、気付けば俺の足取りは軽くなってた。
「よぉミラーッ」
『あッ、シャチ!!』
あれ、この反応…思ってたんと違う。
俺の姿を確認するなり駆け寄って来たミラーは、ジギーが…と、譫言のように呟きながら、今にも泣き出しそうな程不安定顔。
「ととッとりあえず落ち着けよ、な?一体何があったんだ?」
俺もオロオロ。
『…私…本当最低』
そう自虐的に漏らすミラーは、コツン…って弱々しく、俺にもたれ掛かってきた。
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『ちゃんと近くで見ていてあげれば良かった…』
分かり易く項垂れるミラーは、自己嫌悪全開。
「そーだなぁ、まぁ俺にも責任はあんだけど…んーッ、でもこればっかはなぁ」
ガシガシ頭を掻く俺が漏らした、船長を説得しねぇ限り…って言葉を聞いた瞬間、ミラーの目の色がキラーン!!とチェンジ。
「いやッ、難しいと思うぜ?!俺なんて前、泣き落とし効かなくて最長一週間も一人でフルに『ローと話してくる!!』ちょ?!オーイッ」
マジかよ…船長と直談判とはアイツ、本当大物だな…
俺の制止を振り切って、ミラーは俺等が立つすぐ傍の部屋…"治療中"って名の、立ち入り禁止札が掛かる室内へと乱入。
一瞬で姿を消したミラーの残像に苦笑を浮かべながら、俺は虚しく伸ばしたままのこの手を、無理矢理ポッケに突っ込んだ。
「ったくお前…さっき出てけと言ったばかりだろ」
扉の向こうで響く、若干不機嫌なその声が、そんなすぐ終わんねぇよ。なんてお叱り言葉を放ってたから、俺はすぐさま自分の目的地までバビューン!!
悪いミラー!!触らぬ船長に祟りなしだから!!