BOOK2
□No.41
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2人で無駄に泡を立て、遊びながら風呂掃除をしてる最中…
「ペンギン、元気になって良かったねッ」
ベポが嬉しそうに、そう微笑みかけてきた。
『ね〜ッ、ローがペンギンさん抱えて、燃え盛る船から出て来た時は…本当ブッ倒れるかと思ったよ!!』
バシャーンッと勢いよく水を流しながら笑ってそう言う私に、でも…と弱々しく続けるベポは、どこか煮え切らない顔。
『…ベポ?どうしたの?』
「…俺、あんな気持ち…嫌いだ」
ショボン…と顔を伏せるベポ。
『…どういう意味?』
そう尋ねる私を控えめにチラリと見やり、再び足下の水溜めを、静かにバチャバチャやり始めたベポは眉間に悲しげなシワが一本…
『ベポ…』
「………」
『…ベポ?』
「……おれ」
やっと、固く結んだ口元を開いたベポが、今にも泣きそうな顔で私を見つめる。
「ペンギンが居なくなって、キャプテンが居なくなって…2人が戻らなかったらって…そんなの、嫌だった」
本当…今回はヒヤヒヤしたよ。って、強がり全開な苦笑いを向けるベポに、私も怖かった…という、その同じ気持ちを必死に隠した。
『まぁ…無事戻ってきたじゃんッ!!』
弱々しいベポの言葉を豪快に笑い飛ばして、その大きな背中をバシバシバシバシ。
「……ミラーは…本当に次の島で、降りちゃうの?」
『ッ!!』
ピタッと止まる手に、ドキッ!!と跳ねる心臓。
そんな目で…見ないでよ。
『…そだねぇ〜。だって、私がこの船に乗る理由って、ないじゃん?』
私は居候だし…
平静を装いケラケラ笑う私の言葉に、ベポは、納得いかない!!って顔してその身をつめてきた。
「ミラーは俺達の事嫌いなの?一緒に居たくない?」
『………』
だからそんな目で…そんな事言わないで。
『まさか…皆の事、大好きだよ?一緒に居て凄い楽しいし…それに…』
じゃあ!!と続けるベポを手で制する。
『でもね、ローは海賊王を目指してるんでしょ?皆はそんなローを支えたくてこの船に乗ってる…』
ただ真っ直ぐに、純粋なベポの顔を見てられなくて…私は手元のタワシへと視線を落とした。
『私には違う目的がある。そんな私がこの船に乗っても、皆の邪魔しちゃうよ』
キッパリそう告げる私の言葉に、嘘は含まれていない筈なのに…なんでこんなに胸が苦しいの?
『私…皆の事大好きッ!!だからこそ、皆の足…引っ張りたくないの』
ニコッとなるべく自然にベポへと笑いかけて、タイルにタワシを擦りつける。
強く、強く…ゴシゴシと。
ベポは納得してない様子で、私をジーッと見つめてたけど、私はベポの方を向かなかった…凄い泣いちゃいそうだったから。
「俺も…俺もミラーの事、大好きだよッ」
『ッ……!!』
「うやぁ?!はははッ、どうしたのミラー?」
だってベポが…そんな事言うから…!!
堪らずその胸に思いっきり飛び付いた私を、ベポは優しく包み込んでくれた。
ごめんベポ、私…やっぱり嘘ついてたみたい。
『ベポ…私…』
本当はこの先もずっとこの船に乗ってたいの…そう言ったら、ベポはどんな顔するかな。
(ミラー)
『ッ…』
「…ミラー?どうしたの?」
でも、あのジギーが黙ってそれを見過ごす訳無いからさ…
『…ううん、何でもない』
私は伝えたい言葉を飲み込み、ギュッとベポの暖かい身体へ顔を埋めた。
言えない台詞
(クソーッ!!俺のストレートフラッシュー!!おいお前等いつまで掃除してっ…何やってんだお前等?)
(…いい加減空気読むこと覚えてよ)