BOOK2

□No.43
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遠く伸びる水平線に眩しい朝陽が昇り始めた頃、甲板で雑魚寝しているクルー達にため息を吐きながら、輝きを増す水平線に向かって俺は大きく伸びをする。


昨夜、足早に船長室へと向かったミラーを見送った後が大変だった…


(ミラーが居ねぇ!!どこ行っらー?!)


散々喚かれ、探してくう!!と暴れ出すシャチにずっと付き合うはめとなり…やっと奴が潰れたのは、日の出まで一時間もねぇ頃。


「はぁ…」


何で俺はこんな役回りばかりなんだろうな。


「ぐごー、うーん…むにゃむにゃ…」


「…ガキかよ」


気持ちそさそうにイビキをかくシャチの健やかな寝顔が気に入らなかったので、とりあえずその身体に、蹴りを一発入れておいた。


そう言えば…昨夜の悪寒は何だっんだ?尋常じゃなかったが…まだ体調が万全じゃないのかもしれねぇ。


悪化すると面倒だ…自室に戻って俺も寝るとするか。そう思い甲板を出る際、もう一度シャチに蹴りを入れておいた。これでもまだ足りないぐらいだ。


「ふぅ……」


部屋に戻り、倒れ込むようにベッドへと身体を沈ませれば、何だかどっと疲れが押し寄せ心なしか身体も重い。


そういや最近、ミラーの一件もあってろくに寝て無かったな…丸一日気を失っていたとは言え、疲労までは取れなかったか…


ふぅー…と、再度大きく息を吐けば…ソレはすぐに寝息と変わっていった。


――――――----


寝苦しさにうなされ目を覚ませば、服が汗で酷く濡れている。


…あぁ、こりゃ完璧かかったな。


気だるく重い上体を起こし時間を確認すれば、まだあれから2時間程しか経っていなかった。


「面倒くせぇ…」


…とりあえず薬を飲んでひたすら寝よう。わざわざ船長に頼む程の熱でも無い…


「…?………チッ」


だが、乱雑に引っ掻き回す戸棚から取り出した手持ちの解熱剤ボトルは、カラカラと虚しい音すら上げず…それは既に中身が空だという事を、無音で主張していた。


「はぁ…最悪だ」


“……ガチャリ”


仕方無く船長室へと向かうも、何だか足元が覚束無い。


「はぁー…」


薬だけ受け取ってさっさと戻ろう…特に急ぎの仕事は無かった筈だ。寝よう、とにかく寝よう。


虚ろな頭で反芻する言葉を、意図的にしっかり自分自身へ言い聞かせる。


そうでもしなければ、その言葉共は意味も持たず…ただこの呆然と揺れる俺の脳内を素通りしていっちまうからだ。


そんな中、やっとの事辿り着いた船長室の扉を控えめに叩くが、やはり返事は無かった。その方が此方としても都合が良い…


勝手に薬を漁って戻ろう。確か解熱剤は引き出しの2段目に入っている筈だ。


“ガ、チャ…”


「ッ?!……」


そう思い、ソッと開けた扉の先に見えたその光景を、俺はどう解釈すれば良いのか分からなかった。


「………」


あぁ…思ってたよりだいぶ酷い様だ。頭まで痛くなってきやがった…


重い頭を支えながら、再び奥のベッドへ視線を戻す。


「………」


やはりこの目に映るのは、先程と何一つ変わらぬ…船長がミラーを抱き込む形で、2人寄り添い寝ている光景。


服…は、着てるか。


…何だ、案外船長も慎重なんだな。すぐ手を出すのかと思えば…


数秒の間、ボーッとその状況を解析しつつ、あぁ…俺は薬を取りに来たんだったな。と、引き出しを漁り静かに部屋を後にした。


「……………」



自室までの道のりがやけに遠く感じる。今回のはかなり厄介な様だ…悪寒が止まない。


こいつの原因であろうシャチをぶん殴りに行こうか本気で悩んだが、今殴っても俺の方がダメージでかい…そう思い直し俺は、再び真っ直ぐ我がベッドを目指した。



いつでも冷静



(っ…んー……)

(………)

(ん〜?あれぇ……)

(……まだ寝てろ…)

(ん〜…んー……グー)

(……フフ…)

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