BOOK2
□No.46
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「ミラー」
思考回路がショートしてる私へと、その顔に不敵な笑みを浮かべるローが静かに声を寄越した。
「ここに居たいと言ったのはお前だ…この船から、降りられると思うなよ」
フフッ。と妖しく笑って立ち上がり、腰を抜かして動けない私を置いて歩き始めたその背中をゆっくりと目で追う。
するとローは数歩先で振り返り、いつまで座り込んでる…戻るぞ。なんて呆れ顔を向けてきた為、やっと私はヨロヨロヨロ〜っと立ち上がった。
…えっと。とりあえず、とりあえず一旦整理しようか。
うん、何か日向ぼっこしてたら、いきなり潜行するとか訳分かんない理不尽な事言われて。
『………』
グズッたら3秒以内に答えを出せって、これまた理不尽に迫られて。
きっとあれは…潜行するけど何?まさかお前それでも甲板に残ってたいの?うけるー、沈むー、お前死ぬー。まぁ、3秒時間やるよ?死ぬか大人しく従うか決めろよ?
…って意味だったんだろうけどさ、この船に居たい!!って考えだしたら、何か高ぶっちゃって…ね。
そしたらローに、お姫様抱っこなんかされちゃって。
困惑してたら真剣なローに、船に居たいかって聞かれ。
正直に居たいって答えたら、チ…チューなんかしちゃったりしちゃって。
でもローは何事も無かった様にいつも通りだし…
『………』
まッ、まさか!!あれがこの船の歓迎の儀式?!そうなのね?!破廉恥だわ!!
…なんてね。そんな訳ないか。
『…………はぁ』
まぁ、考えたってローが私にキスした理由なんて分かんないし…
仮に聞いてもあの顔で、フフッ気紛れだ…なんて笑われんの、目に見えてるし。
私も別に唇奪われたぐらいじゃ動じないさ。シャチには乳揉みしだかれてるし?ハハハ、ハハ、はぁ。
…きっとあれはローの気紛れなんだ。あまり深く考えちゃ駄目。
でも何でだろう…動悸が…
『………あ…』
ってか勢いで、ずっと此処に居たーい!!とか言っちゃったけど…不味いよね、不味いよね?!
うん不味いよ!!だって、あのジギーが黙ってる訳無いって!!確実に!!
『………ーッ』
不味い不味い不味い。やばいよ、ヤバいヤバいヤバい!!とりあえず皆にジギーの事伝えなきゃ!!
バッと顔を上げ駆け出しかけるも、私のその足は、不意にトボトボ止まっていってしまった。
『…………』
それを伝えて、やっぱお前乗せんの止めだ。とか言われたら、どうしよう…
ってかその前に、皆私をクルーとして迎えてくれるかな…?!居候としては良いけど、仲間としては…とか思われない?!
そんな事を考え出すと、ローが姿を消した食堂の扉が、中々開けられなかった。
どうしよ…ヤバい怖い。
でも…今は考えても仕方ない。そう思い直し、私は躊躇いがちに…恐る恐るその扉をゆっくりと開けた。