BOOK2
□No.49
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ミラーが海軍の船に飛び移ってから少しの間…俺は放心状態で、その場から動けなかった。
アイツ…大丈夫なのかよ?!
でも船長は大人しくしとけって言うし…アイツは何か手に血みたいなの塗りたくってたし…何なんだよもうッ!!
「シャチ、落ち着け」
「ペンギンッ!!でもよアイツ?!」
「…お前はおかしいと思わなかったか?」
落ち着いたペンギンから静かに寄越されたその質問に、俺の頭では大量の“?”がピュンピュンピューン。
一体何の事だ?遠回しに言われたって、俺には分かんねって!!
「ミラーがこの船に来た理由だ。アイツは過度の貧血で倒れたって、お前が連れてきたんだろ?」
「あッ!!」
そうだ…アイツが、戦闘で血を流す訳ねぇのに…アイツに能力打ち明けられた時も、それが不思議だったんだ。今の今まで忘れてたぜ。
「その理由が分かるかもしれないんだ。今は待とう」
でも…なんて俺は渋りながらも、ふと前に立つ船長の顔を覗き見ると…船長は興味津々に、注意深く目の前に佇む船を見つめていた。
「………」
そうだよな…今はミラーを信じよう。
海軍共が一段と騒ぎ出した瞬間、船長が柵を飛び越え、海軍船の甲板の柵に腰を下ろした。一番近い場所で観察するらしい。
「っしゃー!!」
だから俺達もそれに倣う。
よッ!!と腰を落ち着かせて、少し離れた先に海軍共が溢れた甲板を見やり…
「「「ッ?!」」」
俺達は息を飲んだ。
「すげぇ…」
そこには、凄いスピードで海軍共の間を駆け回るミラーが居た。舞う様に、無駄な動作の無い姿に、俺は目を奪われた。
でも海軍共が倒れる気配は無く、傷が付いていく様にも見えない…一体何やってんだ?
よーく目を凝らして見ると…何やらミラーは、海軍共の口や目に狙いを定めてるように見えた。
器用に左手から滴る血を飛ばし、右手の親指を調整しボトルの中身をブチ撒けていって…本当に何やってんだ?
「………ん?」
ハラハラして見守っていると、俺はある異変に気が付いた。
海軍共の顔…あッ、やっぱり!!
ミラーが通り過ぎる度、海軍共の顔に“m”の文字の両端が、内側にクルンと巻いた様なマークが付いていっている。
「なんだ?」
「…あれって何かのマークか?」
「m…に、見えません?」
「何か巻いてっけど」
なんて口々に漏らす他の奴等も、あの異変に気付いた様だ。
粗方海軍共にマークが付いた所で、俺達の前にミラーが背を向け舞い戻った。
『マーキング完了…』
そして、ゆっくりとその背中の牙に手を伸ばす。