BOOK2
□No.52
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目の前でムカつく笑みを溢す男を睨み付ける。
まさかコイツがミラーの兄貴だったとはな。
だが、昔の男では無いにしろ…ミラーにとって特別な存在だった事に変わり無い。
(会いたかったよ)
アイツのあんな柔らかい表情を初めて見た。
海軍を殺った後の、あの悔しさを隠した顔じゃねぇ…俺が見たかった顔を、アイツは違う男へと向けている。
それだけでもムカついたのに、引き寄せたミラーから浴びたのは拒絶の言葉だった。
(離して)
「………」
(俺の船のクルーだ)
違ぇ、そうじゃねぇ。
ミラー、お前は俺の…
「……チッ」
その言葉の続きはミラーによって遮られ、強い意志を宿したあの綺麗な瞳に息を飲んだ俺から、アイツは離れて行った。
その後奴がミラーの実の兄貴と分かったが…あの野郎、生意気に俺を挑発してきやがる。
(お前に入り込む隙間はねぇ)
クソッ…ムカつく野郎だ。俺が知らねぇアイツをあの野郎は知っているって事が、益々気に入らねぇ。
ミラーはあの野郎をバラされたくねぇなど言いやがるし、クルーはミラーを悲しませるなと言う。
俺だってアイツの悲しむ顔など見たくねぇよ…だが生憎、俺はそこまで出来た人間じゃねぇ様だ。
だが…
「はぁ…」
刀を半身抜いた瞬間、あの野郎がまたふざけた事言い出しやがった。
(モフモフーッ)
あの野郎には緊張感が全くねぇ。そんな所ばかり似てなくて良いだろ…
駄目だ、怒りを通りこし頭痛がしてきた。その上船に乗せろだ?あの野郎完璧俺を舐めてやがる。
ペンギンは最早考えるのも面倒な様で、良いんじゃないですか?なんて投げやりに言ってきやがった。早く戻りたいらしい。
「モフモフッ!!こっち来い!!あッ隠れんなって!!ミラーあいつ此処呼べよ!!」
…バラしてぇ。
頭が痛い
(外科医くーん、答えはぁ?)
(……諦めろ)