BOOK2

□No.54
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目を覚ますと、肌触りの良いシーツにくるまれていた。ローのベッドだ。


あれ…私、どうしたんだっけ?


「あの野郎を黙らせろ」


不機嫌MAXで私にそう言ってきたのは、勿論この部屋の主。


『…結局乗せたの?』


「お前がブッ倒れなけりゃ乗る事は無かった」


『ブッたお…?』


あぁ…そうだ。ジギーがいつまでも黙らないから、思わず殴っちゃったんだっけ…グーで。


『ごめんなさい…』


色んな事に対し謝れば、ローは深いため息を吐き、私の頬に手を伸ばしてきた。


「腫れはもう引いている…お前には学習能力が無いのか」


相変わらず不機嫌ではあるが、怒ってる様では無く、むしろ呆れて怒る気力も無いって感じのロー…


『…ジギーは?』


そう尋ねれば、食堂でベポが相手してる。と、ぶっきらぼうに返っきた。ベポ…死ぬなよ…


『ロー…ジギーをバラさないでくれて、ありがとう。あんなんでも一応は私の唯一の兄ちゃんだからさ』


苦笑しながら告げたお礼。


「唯一の…か」


その方が厄介だったがな。なんてローは面倒臭そうな表情を見せた。


「だいたい、何故名が違う」


『ん?あぁ…私のクロスロードってのは父親の姓で、ジギーのラークロイドは母親の姓なの』


「………」


『何処に居るか分かんない2人に、少しでも近付く為…お互いそう名乗ってんだ』


私が説明すると、成る程な。と言い、ため息混じりでベッドに腰を下ろしてきたローの横顔に声を掛ける。


『私をこの船に乗せてくれて…ありがとう…』


そう弱々しく告げる私の眉毛はきっと綺麗な“ハ”の字を浮かべてる事だろう。


『でも私…本当に此処に居て良いのかな?』


「………」


怪訝な表情を向けてきたローから目を逸らす。


『私には…ロー達とは別の、全然違う目的があって…んッ?!』


だから、と続けようとした私の顔に手が伸びてきて…そのまま勢い良く身体を引き寄せられると同時に、この唇を、柔らかいローの唇で乱暴に塞がれた。


「…ミラー、俺はお前を手放す気は無い」


リップ音と共に離れたローの唇から漏れる声…未だ2人の距離が近い。


「俺はお前を最果てまで連れて行く」


『ッ……』


ローの顔が目の前にある。真剣な瞳が私を捕らえて逃がさないまま、ローは更に言葉を続けた。


「お前にその気がねぇなら…まだ間に合う。あの野郎と船を降りろ」


そう言ったローの顔は、いつもの強気な余裕面じゃなく、どこか辛そうなもので…


『………ッ!!』


何故か、ギュッと胸が締め付けられた。


私はローのこんな顔見たく無い…こんな苦しそうな顔はしてほしくないッ。


私は…此処に居たい理由は…


『…………』


…あぁ、そっか。
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