BOOK2
□No.60
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あれから平和に日が過ぎた。
この前、ジギーの部屋となった用具室を一緒に掃除して、見違える程ペッカペカにしてやったってのに…未だアイツはあの部屋で寝た事が無い。
夜な夜なクルーと飲み騒いで、毎回そのまま適当な場所で皆と雑魚寝。
あれからもう一度だけ、私のベッドに潜り込んで来た時もあったけど…アイツの最悪過ぎる寝相に我慢出来ず、私がまたローの部屋に避難してから、それ以降は大人しくどっかで寝てるらしい。
…そして今。
「みんなぁ!!島が見えたよーッ」
食堂で皆と“掃除当番決めババ抜き”をしていたら、ベポが勢い良くこの場へ飛び込んできた。
『本当?!やったぁ!!久しぶりの地面だッ!!あ、私アガリィ』
「残念だなミラー、次の島の名を知ってるか?…先にあがるぞ」
『え?何て島なんです?』
「ペンさん俺もそれ知らねッス。おっしゃ!!アーガリッ」
「あッ僕知ってるよ。ハッエーナ島でしょ?ん、終わり」
「何だそのふざけた名前…くっそ!!おらッ!!早く引けよキャスケット野郎ッ」
「だから俺シャチだって…いい加減覚えろよ。で?その島がなに?…だぁー!!引いちまった!!」
「ログが3分で貯まるんだ」
「「『はっえーなッ』」」
━━━ーーー
結局、掃除当番は全て顔に出るシャチに決まり…
“ドカドカドカドカッ”
私は島の名の由来を教えてくれたペンギンさんが、あの後放った“船長命令”の真意を確かめる為、足早にローの所へ駆けていた。
『ローッ!!上陸しないって本当ッ?!』
扉を開け放つや否やぶつけたその問いに答える前に、ローは私の後ろに居るオマケへと目をやり、大きなため息。
そして一言…
「当然だ」
何故だ!!
「ログはたった3分で貯まる。上陸する理由がねぇだろ」
な…何だって?!そんなバハマ!!
『一ヶ月ぶりの陸だよ?!少しは歩こうよ!!』
「そーだッ!!俺はミラーと散歩すっぞ!!」
「テメェはもう船を降りんだろ…」
オマケ…もとい、ジギーに対しローはまたため息。
「お前分かってねぇな〜…ハーイ、ただ今外科医君の持ち点、マイナス2450点」
『持ち点?』
「つまり、スッゲェ赤点な訳よ。ミラーと上陸させてくれたらプラマイ0にしてやっても良いんだぞ?」
偉そうにふんぞり返って言ってるけど、ソレ大分意味分かんないからジギー…でも、コイツは私がこの船に乗る事を許してくれたみたい。
そりゃ〜あんだけ皆と楽しんどいて、やっぱ駄目。とか言ったら人間性疑うわ。
『歩こうよ〜陸〜!!』
「歩かせろよ〜ヤブ医者〜!!」
ギャーギャー喚く私達を心底ウザそうに見やって、ローが舌打ちをすると同時にペンギンさん登場。
「船長、多少は良いんじゃないですか?どうせ買い出しもしたかった所だ」
流石ペンギンさんッ!!もっと言ってやって!!
「お、良い事言うねペンちゃんッ」
そうケラケラ笑うジギーに、テメェは早く降りろ。って睨んだのは、見なかった事にするねッ!!
結局最後まで喚き散らしたジギーを追いやる為にローが、好きにしろ。なんて呆れ気味にお許しをくれ、私達は人里離れた入り江へと停泊する事になった。