BOOK2
□No.66
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『…ん……』
あれ…ここ……
起きたら全身が固まってて、動くのが凄く億劫だった。
「随分長い眠りだったな」
『…ロー……』
そんな中声を掛けられ、ゆっくり首を動かすと、相変わらず不健康な顔したローが笑ってて…
『…私、まだ起きてないのかなぁ…あれ、もしかして…死んだ?』
思った事を口にしたら不機嫌な声で、寝過ぎて腐ったか。って言われちゃったよ…うん、此処は現実世界らしい。
でも、本当夢だと思った…
だって起きたら、ずっと会いたいって思ってたローが目の前に居て…優しく私の手を握ってるんだもん。
「丸2日は寝てたんだぞお前…もう気が済んだか」
暖かい手が私の頭に伸びる。
私、そんなに寝てたんだ…そうボンヤリする頭が働き始めた頃…私は不意に顔をしかめた。
ローの広い掌から離れた私の右手が、異常な程重い。
その覚えない違和感に、右手へと視線を向けると…そこには、酷く立派な錠がついていた。
あぁ、そーだ。海楼石の錠なんだっけ、コレ…結構重いんだなコイツ。
でも、これが有れば私は…私は違和感が纏う右手を、力強く握り締めた。
『…シャチとジギーは?』
2人の怪我も酷かった筈。
大丈夫かなぁ。と、未だ薄っすらモヤが霞む頭で考えてたら、シャチは相変わらずうるせぇよ…なんてローはため息。
だけど…それから更に続けられたローの言葉に、一気に私の脳は覚醒した。
『ジギーが船に乗ってない?!』
「あぁ。あの野郎とはあの場で別れた」
あのジギーが瀕死だった私の回復も待たず…先に進むなんて事、絶対あり得ない…!!
何で?何が有ったの?!まさかッ…!!
泣きそうな私の頭を優しく撫で、心配すんな…奴は元気だ。って言うローの顔は、言葉通りどこか穏やかで…私は更に混乱。
『………!!』
ローの言葉にきっと嘘は無い。けど、それだけじゃ不安が消えなくて、私は動けない事も忘れて勢い良く飛び起きた。
『ッ?!ー…ッ!!』
そして、全身に響く痛みに声も出せない。
「まだ大人しく『牙…私の牙は?!何処にあるのッ?!』…」
すがりついて、叫び声にも似たその問いかけに、ローはため息を吐いて、ちょっと待ってろ…とだけ言い残し、部屋を後にした。
数分して戻って来たローから私の黒い牙を受け取り、その表面をゆっくり、何度も撫でる…
『…ふふふ』
そして、いきなり笑い出した私にローが怪訝な顔を向けて来た。
『ジギーの奴、もう暴れてるみたい…本当タフな野郎だねぇ』
ベッドの脇に牙を立て掛けながらそう言えば、分かるのか?って聞いてきたローは不可思議そう。
『分かるよ…』
だってこの子、スゲェ穏やかなんだもんッ。それは白のお陰だから…
『ロー、ありがとうッ』
笑顔でお礼を言うと、立て掛けられた牙をジッと見詰めてたローの視線が私へと移り、アイツはゆっくりベッドの縁に腰を下ろしてきた。
『……ロー?』
ローが真剣な眼差しを私に向けてくるから、その真剣な雰囲気が私にも伝染…
「………」
そして、そのままずっと黙って、身動き一つしなかったローの腕が、私の頬へと伸びてきた。