BOOK2

□No.2
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『うわぁ!!デカい島だねッ』


私は目前に迫った、紅葉で赤く染まる綺麗な島を、甲板の先端から眺めていた。


「ミラー」


その声に振り向くと、ローが、ホラよ。って輪ゴムで纏めた札束を寄越してきた為、慌てて手を伸ばす。


『ありがとッ。当ては無いけど、その内返すわ』


その言葉にローは、期待してねぇよ。と鼻で笑ってきた。


「それはもうお前の金だ。好きに使え」


それだけ言ってローは船内へと戻りかけたけど、何か思い出したように振り返り、私の元へとツカツカツカ。何だ何だ?


「今回はログが溜まるまで、少し時間がある」


ローが甲板の柵と、自身の身体の間に私を挟み込むように腕を伸ばして、私の額に軽くキスをしながら、更に続けた。


「宿に泊まりたいか?」


その質問に私は勢い良く顔を上げ、ローと視線を合わせる。宿?宿に泊まれるんですかい?!


「フフッ…決まりだな」


期待に胸膨らむ私の満面の笑みを見て、満足気に島へと目をやるロー。


そしてローは、島の中央に堂々とそびえ立つ、巨大な銀杏の木を示して、18時にあそこだ。と言って、今度こそ船内へと戻った。


宿かぁ…久しぶりだなぁ!!やっぱり、島に滞在するなら、島に居たいよね!!初めて皆と過ごす島だし…うわ楽しみッ。


その後、目立たない島の隅に船を付けて、船番を数人残し私達は上陸した。


「ミラーさぁ、本当に俺等と来ねぇのかよ?一緒にまわりゃ良いじゃねぇか」


中心街まで続く道のりで、シャチがムクれてそう言ってきたけど…今回はその誘いを断る事に。


女の買い物に付き合わせるのも、悪いしね。それに…


『明日からは一緒に行くから。じゃ18時に銀杏の下ねッ!!置いてかないでよー。みんな荷物持ち頑張ってねぇーッ』


「へ?荷物持ち?」


ベポの手を取って走り出した私を、ポカーンとアホ面で見送るシャチ。


だって私、見ちゃったんだ…ローのお買い物リスト。あの量は鬼だよ。


そして暫く、紅葉が続くアーチを歩いていると、一気に視界が拓き始めた。


「『広ッ…』」


目の前に広がる栄えた街並みに、ベポと息を飲む。


至る所に植えられた木々が赤黄色に染まり、街に暖かい雰囲気をもたらしている…うん、良い街だなぁ。


元々、そんな持ち物に拘るタチじゃ無い私は、早々と個人的な買い物を終わらせ、ベポとこの島特産の栗タルトを頬張りながら、色々散策していた。


「あッ!!ミラー栗栗クッキーだって!!あれ食べようッ」


また栗かよ?!って思ったけど…ベポが楽しそうだから、別に良っかッ。


その後も散々食って遊んで歩き疲れた私達は、落ちた紅葉が作り出す、レッドカーペットの途中にあったベンチに腰を落ち着かせた。


ベポは落ち葉を踏んだ時の感触が気に入ったらしく、私の回りを、元気いっぱい走り回ってる。


元気だなぁ…あッ、こけた。まぁ、落ち葉がクッションになって、痛くは無いでしょう。
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