BOOK2

□No.3
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“もっとぉ…”


「……」


『……今の、私じゃないよ』


“あぁッ!!…ん…ッ”


『…これも違うからね』


私の台詞にローは、分かってる。って言いたげな呆れ顔をして、2人で未だ止まない色声の響く隣室に顔を向ける。


“あぁん…やだぁ〜もっとぉ……ああぁん!!”


うわぁ、何か…色々軽そうな女の声だな。


私が痛々しい目で壁を見ていると、ローが、頭悪そうな声出しやがって…うぜぇ。なんて悪態をついた。やっぱり、ローもそう思う?


その後も女の声は止まず、それに加え、今度はベッドが激しく軋む音まで聞こえてきて…もうゲンナリ。


ローがストレスのあまり、刀を手に立ち上がりかけたけど…それは一応、全力で阻止しといた。人の情事に、首突っ込むもんじゃねぇし。


「…うぜぇ」


『分かるよ。でも今日だけは我慢しよう。明日も営んでたら、殴り込み行くぞ。私が許す』


正直2人共、この状況に不快感MAXだけど…近くの酒場はこの時間、既に閉店してるのは確認済みだから、私達には逃場が無い。


遠くまで出歩くのも面倒臭いし…


仕方無く、私達は無理矢理眠りについた。


今の私達にとって、この状況って生殺し!!


―――――----


“チュンチュン”


『んー…朝か…うわぁ…3時間も寝てねぇよ…』


枕元の時計は6時過ぎを指している。隣のローは、未だグースカ夢の中…一度寝たら、なかなか起きないもんなぁコイツ。


『あー…頭おもーい…』


私は昨夜の迷惑隣人のお陰で、浅い眠りしか出来なかった。


隣室の壁に向かって悪態をつき、冷蔵庫の中が空な事に、また悪態をつく。


喉渇いたのに…しゃーない。フロントで何か買ってこよう。ローも起きたら、何か飲むだろうしね。


私は顔を洗って簡単に身なりを整え、フロントに向かい、2人分の飲料水を手に来た道を引き返す。


まだ早朝という事もあり、道中誰とも会わなかった。まぁ、こんな時でこの時間に、クルーが起きてたら天変地異だわな。


『はぁー…ん?』


“ガチャッ”


最上階まで登り、一番奥の角部屋を目指して長い廊下を進んでいると…私達の一つ手前の扉が、私と向き合う形で開いた。


“キィー…”


つまりは、あの迷惑隣人の部屋な訳で…


昨夜のストレスと、寝不足のイライラもあって、文句の一つでも言ってやろうかね!!って息巻き、私はそのまま廊下をズンズン進む。


“バタン!!”


そして扉が閉まり、部屋の主の姿が露になった。


『………』


その瞬間、私の頭に浮かんだのは…昨夜は随分お盛んだった様で〜。なんて、嫌味の言葉なんかじゃ無かった…



ヤバくね?



(ひ…引き返す?いやそれは不自然過ぎる…と、とりあえず無視だわ、無視ッ!!)
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