Wave

□疑惑
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ソファにゆったり座って文庫本を取り出す義人に、一磨が告げる。

「おい、座るなりそれはないだろう?」

「…あいつらが、あれでも?」

俺は悪くない、と言わんばかりに義人は背後を顎で示す。


「あ、これ、この間出たばっかだよね!  観たかったんだ〜」

「翔はまた子供向けのSF選ぶね。こっちのほうが絶対面白いでしょ?」

棚一面に収まったDVDを物色する翔と京介。


「一磨〜、テレビのリモコンどこ?」

わが家のように、リモコンの定位置でキョロキョロする亮太。


「こら!  今日はコンサートの反省会だろう?  DVDは後で!
 亮太は飲み物用意するのを手伝ってくれ」

呆れた声でテキパキ指示を飛ばす一磨に、亮太が「はい、は〜い」と、立ち上がった。



とりあえず両手に二つのグラスを持って亮太がリビングに戻ると、黙々と本に目を落とす義人がいた。

「はい、どうぞ〜。…いいの?まだ読んでて」

目の前にグラスを置きながら聞く。

「まだまだ始まらないだろう」

そう言って振り返った先には、DVDの棚を前に、何やら思案顔の京介がいた。

「京ちゃん、どうしたの?」

残り一つのグラスを手渡しながら、亮太が声を掛けると、京介は真面目な顔をして小声で言った。


「…これだけあったら、あると思わない?」



「……あ〜、そういうこと。
リーダーだって、お年頃だもんね?」

「あるって、何が…」

「翔ちゃん、しーっ!!」

大きな声で聞き返した翔を抑えると、亮太はニヤリ、と笑う。


「…実はケースと中身が違ったりして」



京介が無言で一つのケースを取り出して、パカッと開ける。

「…ハズレ」

亮太も続けてケースを開けた。

「こっちもハズレ…」

「何してんの?二人とも」

きょとんとした顔の翔に、京介が薄く笑って告げる。

「アタリが出たら、翔にも観せてあげるから、ケース戻すの手伝って?」


 




「何やってるんだ?  
……あぁっ!!  順番がめちゃくちゃじゃないかっ!」


と、あらぬ疑いを掛けられた一磨が雷を落とすまで、あと数分。




fin.

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