Dora in April
□4月のドーラ
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「いいか、よく聞け!
僕には伝えたい事など何一つない。
“わたしは、ほとんどドーラとコーヒーだけで生きていた”のだ」
『…お前、
何言ってんの?』
僕の家は下町の商店街を抜けた角にあるタバコ屋だった。
今やタバコなんて自販機で買うものだ。誰が好き好んでタバコ屋まで足を運ぶのか、その辺を5分も歩けば自販機なんて嫌でも目に付く。
『なぁ、腹減った』
「タバコならある」
幼なじみの小太郎は9歳の時に両親を事故で失い、今は婆ちゃんと暮らしている。
僕達はいつも一緒にいた。
もちろん同じ中学へ進み1年の時は同じクラスだった。そして、今年2年生になった僕達はやっぱり同じクラスになった。
『…タバコじゃ
腹ふくれねーだろ』
「あ!アキラの奴、今日店番するって言ってた」
『ラッキー、行くぞ!』
アキラは商店街の中にある駄菓子屋の息子で、僕と小太郎の子分みたいなやつだった。
月に1、2回アキラが店番をする日に、僕達はアキラの家の駄菓子をたらふく食べられるのだ。
もちろん、代金は払わない。アキラも観て見ぬ振りをしてくれる。
あくまで、アキラの好意だ。と僕も小太郎も疑わない。